宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

卒業式でした

 もう1週間経つのかー。てか、今日入れてあと4日で今年度も終わりですよ・・・。ま、いいや。とりあえず、書きます。かなりキモくて長い、個人的な感慨なので、児童文学館とかコストコとかで(笑)検索しておいでになった方は、どうぞスルーなさってください。では、始めます。



 もしかして俺、モモカンみたいになりたかったのか!?
 そう気づいて自分で愕然としたのは去年の年末くらいだったでしょうか。


 いやいやいやいや。無理無理無理無理。
 土日も含めて毎日何時間も練習で集まって、合宿やって遠征して厳しい試合をみんなで潜り抜けて、部長(「責任教員」でしたっけ?)のサポートもあって、自分の資金稼ぎはひたすら体力仕事で頭は全部野球部のために使って、そういう条件があって初めてモモカンの指導が成り立つわけじゃん。
 ウチなんか、学生たちには「ゼミは部活みたいなもの」だとか言ってるけど、実際集まってんのは週に1回だし。研究室によく来る学生はいるけど全員じゃないし、来たって自分たち同士でしゃべってるかマンガ読んでるわけだし、課外活動多いっつったって月に1回あるかないかだし、それも全員参加するわけじゃないし。


 なのに、どうやら、ばらばらで強烈な個性をそれぞれ持ってはいるけど、今までそれほど高いレベルの経験を積んでるわけではない、そんな学生たち一人一人のメンタリティや長所短所を的確に把握して、誰にどの局面でプレッシャーかけたり逆にほめて伸ばしたりして、誰と誰をどうからませて、集団としての化学反応をどう誘発して行くか、とかを、常に全力で考えて実践し、かなりの程度的確に実現して行く、みたいな、「ちょっと前まで全く知らない者どうしだったのに」「チームの形ができあがっていく」場面を自ら導き出して「ぞくぞくっ」としたりする、そんなことがしたかったらしいんですよね。
 もう、自分でも唖然としました。大学の教師が持つ種類の欲望じゃないだろう。なんで、こんなことになってんのか。


 一つは、自分がこの大学に来て、1期生、2期生と、ゼミ生たちと付き合う経験を重ねるにつれて、もともと嫌いじゃなかった教師という仕事が、さらに面白くなってきて、より多くの、濃い時間をゼミ生たちと過ごしたいという気持ちが強くなってきていたこと。
 それから、赴任2年目の学部学科再編と新カリキュラム作成の異常に多忙な1年が終わって、3年目は、新カリキュラムのために講義系科目を全部新ネタにするという試みをして、これまた異常に多忙ではあるけれど、2年目よりははるかに授業のために力を使えている充実感の中で、3期生のゼミをスタートさせられ、また、1期生、2期生よりは少し長く一緒に時間を過ごせるようになっていたこと。
 そしてもちろんこれが一番大きいんですが、人数が最多と言うだけでなく、一人一人のモチベーションの高さ、個性の強さも、1期生、2期生と同等以上な上、3年次の1学期が終わるころには、もうゼミ全体としての、一体感というか、「ちょっと前まで全く知らない者どうしだったのに」「チームの形ができあがっていく」様子が見て取れたこと。この子たちは、何かすごいことになるんじゃないか、と思わせられたんですね。


 重大な勘違いは、その「ちょっと前まで全く知らない者どうしだったのに」「チームの形ができあがっていく」過程は、別に僕が意図的に導いたわけではなく、彼ら自身のモチベーションや相性によるものだった、ということでした。実際、その後は、むしろ僕が追いかけるのが精一杯という感じで、彼らはどんどん自律的に盛り上がって行き、これは、もしかして、すでに俺がいようといまいとあまり関係なくなってるのでは?と感じさせる域に入って行ったのでした。
 あれ?あの子とこの子ってそんなに気が合うんだっけ?みたいにどんどんお互いの人間関係は更新されていき、ゼミ以外の時間でも様々な組み合わせでどっか遊びに行ったり、夜中にオンラインでコミュニケーションしたりしてる(笑)様子が見える一方、僕が企画した課外活動には意外と参加者が少なかったり(笑)、笛吹けど踊らず、というより、こっちの笛とは関係なく勝手にどんどん踊ってる感じになってきました。あれあれあれ?ゼミ運営ってこんなに難しいんだっけ?てかこれって、そもそも「うまくいってる」状態なん?「うまくいってない」状態なん?みたいな。もしかして、今ミヤモトゼミから一番疎外されてんのはミヤモト本人なのでは?みたいな。
 要するに、長く関われるようになったつったって、所詮モモカン・レベルじゃないわけで、15人もの集団が自律的に動き出したら、コーチング理論の基本も知らないような大学教員が追いつけなくなるのは当然なんですよね。
 もちろん、週に1回のゼミの時間は、がっちり取り組んでくれてたんですよ。卒論も、みんな、こちらの期待値以上のものを書いてくれました。ただ、何か、微妙に、このゼミは、もっと、集団としてすごいことになってもおかしくなかったのでは?という感覚が、だんだん増してきたのが、去年の1学期くらいからでした。2期生が加わったことや夜間主生のための夜ゼミにも昼間主の3期生たちを誘ったことは特に問題にはならなかったんですけど、やはり15名もの大集団が、自律的にお互いの人間関係を更新し続けてくと、自然と、テンション高い組と、微妙に温度低い(ように僕からは見えた)組に、分かれてきてしまうんですよね。
 その流れが、時々ある種のぎくしゃく感として、表面化する時があって、これはやばい、何とかせねば、と思い始めた頃が、ちょうど児童文学館の件がどんどん深刻化して行き、プライベートな案件もにっちもさっちもいかない感じになり、自分自身が微妙に鬱モードになっていく去年の秋口の時期に重なってきてしまったのでした。
 その上、去年入った4期生もまた14名の大集団で、3期生と4期生のコミュニケーションが、2学期に入っても、当初期待したほどのペースでは進んでいかないのも、僕にとってはあんまり望ましい状態ではありませんでした。
 で、もうこれはこのままじゃだめだ、全部がダメになりかねない、と思って、せめてゼミ運営についてはちょっと関わり方を変えて力を入れようと思って、大学祭とかはわりとがんばったんですよ。卒論指導も、悔いの残らないようにと思って、1期生2期生以上に、ちゃんと草稿読みこんで、こっちの好きなタイプの論文書かせるんじゃなくて、彼らが書きたいものを一番いい形にするにはということを、今まで以上に意識してコメントしたり、それなりに努力はしました。
 その辺のラスト半年の悪あがきで、どれくらい事態が変わったのか、仮に変わったのだとしてそれは良くなったのか否か、ちょっと今はまだ生々しすぎて、よくわかりません。あ、でも、とりあえず、3期生と4期生のコミュニケーションは、大学祭を通じて、それ以降かなり深まったと思います。ま、それも結局彼ら自身の力のような気はしますが。


 そんなわけで、卒業式の日に、彼らにも言ったんですが、特に3期生に対する2年間の関わり方は、ま、一言で言うと、中途半端でした。なまじ関われる時間が長くなった分、失敗をする機会も増えてしまい、言っちゃいけないことを言ったり、やっちゃいけないことをやってしまったり、逆に言ってあげなきゃいけないことを言えず、やってあげなきゃいけないことをやらないままにしてしまった場面が、一人一人にも、数人単位に対しても、ゼミ全体に対しても、たくさんあったと思います。
 せっかく彼らが自発性を発揮してるのに、こちらが無理やり無駄な抑圧をかけてしまったり、大なり小なり傷つけてしまったり、思い返してもすぐに数えきれないくらい、いろいろやっちゃってるんですよね。こっちが自覚できてないものも少なからずあるだろうし。
 教師と学生の力関係が対等でない以上、良かれと思っててであっても、この種の失敗は基本的に、一方的に教師が反省すべきものだと思います。ほんとに申し訳ないことをたくさんしました。それも、一応伝えたんですけど、受け入れてもらえてるかどうかはわからないです。
 勝手な話ですが、教師としては、本当にたくさんの失敗をさせてもらえる機会があったという意味で、すごくいろんなことに気づかされたし、勉強させてもらえたし、経験値を上げさせてもらえました。
 がんばった甲斐があったと素直に思える場面ももちろんありましたし、こちらが何気なく投げかけたものが、すごく大きくなって返ってくるような、嬉しい驚きもありました。
 それら全部含めて、とんでもなく複雑で濃密な2年間を過ごさせてもらったなと思います。本当にありがたいことだと思います。
 今年度加わった3名も含めて18名全員、幸いにして、みんなタフで柔軟な知性と感性の持ち主たちなので、このゼミから得たもので活かせるものは活かして、このゼミでできたつながりはさらに更新し続け、不快だったであろう僕のいろいろな失敗も、うまく他山の石にして行ってくれることと思います。
 同じくらいの大きな声で、ごめんねとありがとうを言いたい、そんなエモい気持ちでいっぱいです(笑)。実際、ほんの数週間前まで、今年こそ卒業式後の打ち上げは徹夜になったりするかもしれないからそん時は付き合うぜ、とか思ってました。実際は、体調悪くしてしまったんで、その展開になったら付き合えないや、困ったな、と思ってたら、結局、例年通り、特に2年間を振り返って熱くなったりしんみりしたりもせず、いつも通りのバカ話で盛り上がり、普通に終電で解散する打ち上げでした。


 打ち上げの帰り際に、何人かが「明日月曜じゃん、ゼミの日だよ」「課題まだ終わってないよ」とか冗談言い合ってんのが、ウチらしくていいなと、思いました。関係の形は変わっても、「そして毎日は続いてく」(オザケン)わけで、これからの彼らの毎日を、楽しみにしたいと思います。
 あ、そうだ。卒業の記念に毎年、今まで撮った課外活動の写真をDVDに焼いたのとかをあげてるんですが、今年は某有名詩人の有名詩集の文庫本をあげたところ、意外とストレートに好評で嬉しかったです。これ、来年もやろう。何をあげたかは内緒なのさー。
 てことで、卒業式当日、ゼミの掲示板、に続いて3回目になってしまいますが、ここ読んでくれてる卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございました。よかったらまた、しゃべったり遊んだりしましょう。