宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

知事案でも児童文学館は廃止の方針

 土曜日はマンガ学会の理事会のため、東京に日帰り出張だったんですが、その間に、特に存続の要望が強かった府立施設についての、知事の方針が報道されました。

体育会館、当面存続 児童文学館は廃止
医療費助成 削減へ…来年度から


 大阪府橋下徹知事は30日、財政再建を巡る部局長との公開議論で、大相撲春場所の会場である府立体育会館(大阪市浪速区)について今年度中は存廃の判断をせず、当面は存続させる考えを示した。国際児童文学館吹田市)は廃止し、上方演芸資料館ワッハ上方大阪市中央区)については移転・縮小する意向を強調した。一方、今年度の削減見送りを決めていた乳幼児、高齢者、ひとり親を対象とする医療費助成は、来年度から削減する方向で市町村と協議することを明らかにした。


 府立体育会館を巡っては、知事直轄の改革プロジェクトチーム(PT)が2011年度に売却する案を打ち出していた。この日、府教委側から、利用用途の拡大などの増収策が示されたため、橋下知事は「体育施設としてではなく、一等地の府有財産という観点で活用を考えてほしい」と答え、存廃の結論を先送りする考えを示した。

 同様に、判断を先送りするのは弥生文化博物館(和泉市)。PTは、近つ飛鳥博物館(河南町)との統合案を示していたが、利用促進策の効果を見定めて改めて検討することになった。

 国際児童文学館について、橋下知事は「いったん廃止し、必要だという声が出れば再構築すればいい」と廃止の考えを変えなかった。ワッハ上方についても「別の場所でいい」と、PTの移転・縮小案を支持。入居するビルの所有者である吉本興業が、賃料を値下げする考えを示しており、値下げ額を考慮した上で対応を最終決定するという。

 スケートリンクを持つ臨海スポーツセンター(高石市)は存続させる意向だが、府の運営補助金は11年度から打ち切る。

 一方、事業関連では、自己負担額を月1000円としている医療費助成について、来年度から1割負担(上限は月2500円)に見直す。ただし、障害者への助成は、来年度以降も現状通り維持する方針。

 小学校に警備員を配置するための市町村への補助金は来年度から廃止。私学助成は、高校の授業料助成世帯の所得上限を、PT試案の年収680万円から540万円に下げる一方、288万円までの非課税世帯は削減を見送るとした。

(2008年05月31日 読売新聞)
http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/h_osaka/ho80531a.htm

橋下知事、児童文学館は廃止し府立体育会館は存続方針
2008年05月31日

 大阪府橋下徹知事は30日、改革プロジェクトチーム(PT)が廃止方針を打ち出していた府立8施設のうち、国際児童文学館など5施設を廃止する方針を決めた。大相撲春場所が開催される府立体育会館など3施設は存続させるが、運営費削減などの改善措置をとるよう担当部局に指示した。

 廃止するのは国際児童文学館吹田市)、青少年会館(大阪市中央区)、現代美術センター(同)、文化情報センター(同)、総合青少年野外活動センター(能勢町)。

 文学館は来年度に廃止し、中央図書館(東大阪市)の書庫を改修して70万冊の蔵書を移して機能を集約する。橋下知事は運営する財団法人についても「一度廃止し、必要とする声が上がれば再構築してもいい」としている。

 PT案の廃止方針を撤回して存続させるのは、体育会館(大阪市浪速区)、弥生文化博物館(和泉市)、臨海スポーツセンター(高石市)。

 いずれも運営改善を指示し、体育会館はプロのスポーツ大会やコンサートなどの興行収入を増やし、府への年間8千万円の納付金を1億3千万円に増額することを求めた。また、臨海スポーツセンターは大規模改修が必要になる14年度まで存続させ、運営が改善されていなければ廃止し、弥生文化博物館も運営費20%削減などの経営努力をすることが条件だ。

 PTが移転方針を示していた上方演芸資料館ワッハ上方大阪市中央区)は、建物を所有する吉本興業の賃料引き下げなどの条件提示を待って最終判断する。

 一方、橋下知事は同日、高齢者や乳幼児、一人親家庭を対象にした医療費助成の削減時期について、PT案の11月から、来年4月に延期することを明らかにした。現在は1医療機関で患者の自己負担は月千円までだが、月額2500円の上限を維持しつつ、一割負担に変更になる。(小河雅臣、斎藤利江子)

朝日新聞
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200805300110.html

学校サポート「譲歩せぬ」…公開議論 知事意向
 橋下徹知事直轄の改革プロジェクトチーム(PT)がまとめた財政再建プログラム試案を巡り、30日も行われた各部局との公開議論。PT試案が今年度で廃止を打ち出した「学校サポートチーム」事業の存続を求める府教委に対し、橋下知事は「なぜ(現場の)教員で対応できないのか」と譲歩しない意向を示した。


(中略)


国際児童文学館
 来年度廃止

 (府教委)移転は良いが、子どもに良い図書を選定するなどの研究機能は存続を。

 (知事)本当に府の予算で行うべき研究なのか。いったん廃止して、必要なら再度行えば良い。

(2008年05月31日 読売新聞)
http://osaka.yomiuri.co.jp/tokusyu/h_osaka/ho80531b.htm


 「財団法人についても「一度廃止し、必要とする声が上がれば再構築してもいい」としている」。
 

 うーん、これはいったいどう読めばいいんでしょうか。必要とする声は、上がっていますよね。何十もの団体からの存続要望書を、知事は目にしていないのでしょうか?手塚治虫文化賞受賞の知らせを受け取っていないんでしょうか。あるいは、もっと違う声の上げ方が必要なのでしょうか。だとすれば、誰がどのような声の上げ方をすればよいのか、説明していただきたいと思います。
 また、財団を「一度廃止し」、その後でまた「再構築」するなどということは、全く非現実的な話です。現場で日々どのような仕事が、いかに高度な専門性を持った職能集団の組織的な連携を必要とするものであるかを、知事が全く認識していない証拠です。20年かけて蓄積されてきた、現在のスタッフ個々人の経験知、および財団全体の組織力は、一度廃止すれば、「再構築」にはまた20年かかってしまうでしょう。
 簡単に「一度廃止し」などとおっしゃっていますが、それによって現在の優秀なスタッフのみなさんは一度に失業し、転職を余儀なくされるわけでしょう?「再構築」の際に、それらのスタッフが再び、今と同じモチベーションと忠実さを持って、戻ってきてくれるとは到底思えません。そうすると、また一からやり直しになるわけです。無駄にもほどがあるというしかありません。
 今回、存続の要望が強かった施設について、廃止の方針を撤回、または棚上げにしたケースが多く、それぞれについて、なぜ撤回、または棚上げしたかについて、知事はそれなりに説明をされています。ところが、児童文学館については、なぜ児童文学館だけは廃止の方針のままなのか、数々の存続要望書で述べられていることや、教育委員会からの説明を踏まえた上で、説明するということが一切なされていません。
 単に支出を減らすというだけでなく、まさに優秀な多数の職員のクビ切りを伴いうる廃止方針であり、年間9000万円の寄付を民間から引き出すことを可能にするシステム、および極めて高い評価を得ている活動実績を、みすみす捨ててしまう廃止方針なのですから、そこまでして、2億のランニングコストを削減するのは、果たして本当に割に合っているのか、知事の認識を示す必要があると思います。実際には、府立図書館に移すためには、図書館側の書庫の大幅な増設が必要で、それにもお金はかかるわけですし、70万点もの新規資料を管理運営するのも、今までの府立図書館の予算ではまかないきれるはずがないわけで、2億まるまる節約できるわけではないですし。
 児童文学館のコストパフォーマンスは、入館者数だけで測れるものではないわけですが、そこのところも、理解してもらえていないようです。

 
 事態は深刻さを増しています。まさか「味方」の側のはずの教育委員会からも「移転は良いが」などという発言が出てくるとは思いませんでした。どうすれば、知事に、耳を傾けてもらうことができるのか。せめて、各団体からの要望書にきちんと目を通してもらうことはできないのか。
 最後の議論の場となる府議会まで、もうひと踏ん張りしなければなりません。でも、今日はもう疲れたので、寝ます。