宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

北九州市漫画ミュージアムは8月3日オープン!ボランティア・スタッフも募集!

【オープン当日の日付で掲載しています】

 すでにあちこちで報道されている通り、北九州市漫画ミュージアムは8月3日オープンとなりました。


 まずは、まだネット上では全然知られていないようなのでお知らせです(お知らせしていいということは確認済みです)。
 実は、公式サイトがすでに公開されています!ぜひ、ご覧ください。このエントリを書いている7月7日現在、まだ制作中のページもありますが、随時更新されて行くと思います。


http://www.ktqmm.jp/index.html


 なかなかいい感じのサイトですよね。オープニング記念の「松本零士×ちばてつやトークショーは事前申込制なのでみなさんぜひぜひ(*申し込みは23日で締め切られました)。


 松本零士さんが名誉館長になられることは、盛んに報道されていますが、7月13日には、地元在住の漫画家・田中時彦さんが館長になられることも発表されています。毎日新聞の記事を引用しておきます。

北九州市漫画ミュージアム:小倉北区出身の漫画家・田中時彦さんが館長に−−市発表 /福岡

毎日新聞 2012年07月14日 地方版


 北九州市は13日、8月3日オープンの市漫画ミュージアムの館長に、小倉北区出身で宗像市在住の漫画家、田中時彦さん(60)が就任すると発表した。

 田中さんは1952年生まれで、小倉工高卒業後の71年、新日鉄八幡製鉄所に入社。79年に雑誌「少年マガジンSP」の「スーパーぶたマン」で漫画家デビューした。昭和をテーマにしたノスタルジックな画風が特徴で、93年には朝日新聞日曜版に街角風景と短文を載せた「漫歩景」を連載。市漫画ミュージアムの展示設計者を選ぶ審査委員も務めた。6月に新日鉄を定年退職したばかり。

 市は2月、長年地元の漫画文化をリードしてきた田中さんに館長を打診、5月に受諾されたという。【宍戸護】

〔北九州版〕


 田中さんは、北九州が誇る、日本で最も長く続いているマンガ同人誌サークルの一つ、アズ漫画研究会を、中学生の時に立ち上げられた人でもあります。このアズ漫画研究会にはその後、当時まだ熊本の高校生だった米沢嘉博さんが参加することになります。同人誌『あず』のバックナンバーには米沢さんの作品も載っています。

 
 その後、米沢さんは上京し明治大学に入学しますが、その米沢さんがコミックマーケットの二代目代表を長く務めることになったことを思えば、北九州はコミケのルーツの一つであるとも言え、日本のマンガ同人誌の歴史を考える上で外すことのできない大きな位置をアズ漫画研究会は占めていることになります。
(*アズ漫画研究会のホームページと歴史はこちら
http://asmanken.web.fc2.com/
http://asmanken.web.fc2.com/profile-2.htm


 その意味で、田中さんの館長就任は、実に適任だと思います。このミュージアムでは、館長は名誉館長と違って、実質的なミュージアムのトップとして実務的なお仕事を担っていただくことになるようですが、新日鉄で定年まで勤め上げながら、漫画の活動も続けてこられた田中さんは、社会人としての常識と表現者のメンタリティをバランスよく兼ね備えた方だと思われます。
 私も上の記事にある、展示設計者を選ぶ審査でご一緒しましたが、本当に穏やかな人格者で、しかもきちんと見るべきポイントは見ておられ、言うべきことは言われる方、という印象でした。



 そしてこれはまだ市役所の方のサイトにしか載ってないのですが、開館後、館の運営をサポートしてくれるボランティア・スタッフの募集も始まっています。


北九州市漫画ミュージアムサポーター募集」(7月31日締め切り)
http://www.city.kitakyushu.lg.jp/shimin/02101015.html


 上記のリンク先に詳しい説明がありますが、なんか、下手な学芸員実習受けるより、よっぽどいい経験になるんじゃないかっていうような、しっかりした研修を経て、認定証をもらった人が、ユニホームも支給されて働く、ということのようです。
 漫画に興味がある人だけでなく、美術館・博物館・図書館の運営や、イベントの企画・運営などに興味のある人にも、すごくいい経験になるんじゃないでしょうか。
 実は、北九州市の美術館・博物館は市立美術館をはじめとして、ボランティア・スタッフの積極的な活動で全国的にもさきがけ的だったり、有名だったりする施設が多く、「市民参加」をただのお題目じゃなく具体的な力にするノウハウが蓄積されていたりします。今回のサポーター募集も、そうしたノウハウを活かしたものになるのではないかと思っています。
 きちんとしたプログラムの研修になっているので、定員が20名程度と、かなり絞り込まれた募集になっていますが、自分もこの生まれたばかりのミュージアムを一緒に育てていきたい!って方は、ぜひぜひご応募ください!
 締め切りは7月31日必着です!




 …いやー、それにしても、もう、マジで感慨深いです。
 北九州市立大学勤務時代に立ち上げられた基本コンセプト検討委員会に参加して以来、今日に至るまでずっと、いろんな形でお手伝いをさせていただいてきました。
 このエントリを書いているのは7月7日ですが、このところ常設展の展示解説文のチェックなどをさせていただいています。パネルのレイアウトなどもPDFで見せてもらっているのですが、こうやって具体的に形になって来ると、ほんとにいよいよという感じで、興奮します。
 そして、僕が見させてもらっている常設展部分に関する限り、素晴らしい水準でスタートダッシュが切れると思います。後発の施設なのだから、既存の施設よりよくなるのは当たり前、と言えば言えるんですが、予算やスタッフや準備によっては、必ずしもそうはいかないものです。
 ですが、この北九州市漫画ミュージアムは、その点、ちゃんと今までのマンガミュージアムの水準をきちんと踏まえ、その「先」へ、一歩進むことができると思います。その意味で、学芸員も司書も複数採用できた上、そのトップに専門研究員という枠を作ってもらって、そこに京都国際マンガミュージアム(以下、えむえむ)の研究員だった表智之さんに来てもらえたのは、この施設にとってほんとに幸いでした。
 京都えむえむの経験と到達点、そして抱えている課題まで知り尽くした表さんに来ていただいたおかげで、このミュージアムは、えむえむの運営にあたっている京都精華大学のような強力なバックアップ体制を持たないにもかかわらず、京都と対抗できるレベルの施設としてスタートを切れそうです。
 みなさん、ぜひぜひ、ご期待下さい!


 で、そんな興奮を味わいつつも、痛恨なのが、畑中純先生に開館を見届けてもらえなかったこと。これは、このブログでも以前書かせていただきました。


http://d.hatena.ne.jp/hrhtm1970/20120613/1339590439
http://d.hatena.ne.jp/hrhtm1970/20120617/1339912472


 それと、それに比べれば小さいことではあるのですが、私、この8月3日に、去年もやった中京大学の集中講義が先に予定として入っていて、どうしても日程を動かせないということなので、オープンの瞬間に立ち会えないのです…!
 このことが分かった時の、自分のがっかり感というか悔しさが、自分でも驚くくらいでして、そこで改めて、自分がものすごくものすごくこの日を待ち望んでいたことに、自分で気づくというような次第でした。


 なので、8月3日には私はいませんが、4日の集中講義終了後、夜、北九州入りし、5日に施設の見学をさせてもらう予定です。3日にミヤモトがいないからと言って、何かトラブルがあったとかではないので、知り合いのみなさんはご安心を(ってそんな心配する人いないでしょうけど)。