宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

近くて懐かしい昭和展

 昨日は、夕方から、ゼミ生数人と、北九州市立美術館分館で開かれている「近くて懐かしい昭和」展を見に行きました。
 当時の駄菓子屋や大衆食堂、銭湯、一般的な民家などの町並みが実物大で再現されていて、町並み再現部分では写真撮影も可、ということで、楽しい展覧会でした。
 ただ、まあ、なまじ自分の得意分野なもんで、期待も大きかったせいか、思ってたよりはゆるいな、とも思ってしまったのでした。個々の展示品のデータがほとんどなかったり、全体としての構成がいささか散漫な感じになってたり、微妙に詰めが甘い気がしたんですね。
 あと、やっぱり、せっかくもともと歴史博物館で企画された展覧会なんですから、今日の昭和30年代ブームに対する批判的な視点をどこかに入れるべきではなかったかなとも思います。あまりにも、「貧しかったけど希望に満ちていたあの時代」的なイメージに寄りかかりすぎではなかったかと。
 僕は昭和45年生まれですから、30年代のことは知識としてしか知りませんが、例えば、九州で言えば、筑豊には土門拳の写真集『筑豊のこどもたち』に捉えられているような貧困があり、水俣では、原因不明の神経疾患として、その存在が確認された昭和31年から、水俣病の被害がどんどん拡大していったのが、昭和30年代なわけです。現在の貧しさと将来の希望の間を埋める高度経済成長の陰の部分が、日本中の色んなところに大変な傷を負わせつつあったのもまた、昭和30年代だったことに、やはり少しは触れるべきではないか、という気がしました。
 僕自身、田舎町の育ちだからかもしれませんが、展示空間の町並みも、展示されている生活雑貨や家電も、あ、俺のちっちゃい頃も、こんなだったよな、という感の方が強く、その分、その頃の自分の身の回りにあった相当ハードコアな貧乏や荒廃のことも思い浮かんでしまい、ちょっといろいろ考えさせられる展示でもあったのでした。
 展覧会見学後は、小倉の居酒屋でプチ忘年会。大いに盛り上がったのですが、話の内容は、僕とゼミ生たちが白い目で見られることのないように、伏せておくのであります。