そんなわけで、マンガバトン、行きます。
本棚に入っている漫画の数
15年前くらいに数えたことがあって、その時は約3000冊だったんで、多分4000から5000の間ではないかと。こないだの朝日新聞の取材の時にも同じことを聞かれて、5000てことにしといたので、そういうことで。
マンガの評論家とか研究者としては、少ない方だと思います。マンガって、文学書や美術書に比べればはるかに単価が安くて、とにかくかさばるので、油断していると、ものすごい勢いで増殖していきます。ウサギ小屋inジャパンの住人としては、新刊レビューで取り上げたもの以外の新刊は、原則買わないことにしてるのです。
今おもしろい漫画
うーん、いっぱいありますよ。ありすぎて、かえって難しいな。
夏休みになったら、共同通信でやってる新刊3点紹介コラムを、去年の分から随時ここに載せていこうと思ってますので、それを見ていただければ。
去年は小田扉とジョージ朝倉の年だったなと思ってるんですが、今年はどうなんでしょうか。
ま、でもここは僕の批評家としての義務だろうってことで、やはりこれを挙げておきましょう。
- 作者: 浜岡賢次
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2005/06/08
- メディア: コミック
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よく読む、または特別な思い入れのある5つの漫画
思い入れの方でいきます。まずはこれから。
- 作者: 手塚治虫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1977/06/13
- メディア: コミック
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- 作者: 手塚治虫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1977/07/13
- メディア: コミック
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小学校1年生の時、なぜかこれが読みたくなって、生まれて初めて親におねだりということをしました。どうしてこの作品のことを知ったのか、なぜ読みたいと思ったのかは、不思議と全く憶えていません。
でも、いつもウチに、親父の取ってた「週刊ポスト」と「週刊現代」と「アサヒ芸能」を配達してくれていた町の本屋さんが、この本を届けてくれた時のことはものすごくクリアに憶えています。
「あおい(書店)でーす」というおじさんの声が聞こえて、2階にあった僕の部屋から階段を駆け下りると、玄関にこれの1巻と2巻が置いてある。そこまでの映像がはっきりあるんですね。
僕が小1だった1977年というのは、ちょうど手塚治虫漫画全集が刊行され始めた年で、その第1回配本がこの「ジャングル大帝」の1巻と2巻、それにあとなんだっけ、別のタイトル2点だったのでした。今自宅で書いているので、手元に本がないんですが、アマゾンで調べると1、2巻は6月刊行、3巻は8月刊行です。でも実際の発売日は多分もっと早いから、僕んちに来たのは5月か6月なんでしょうね。こんなの当時の「少年マガジン」の広告を見ればすぐ調べられるんですが、なんとなく確認しないままにしておいてあるという。おセンチですね。3巻を買ってもらったのは、ずーっと後で、カゼで寝込んだ時だったので、それまでこの2冊を何十回も読んでます。ジャケットがボロボロになってしまって新しく同じものを買いなおすことになったマンガは、実は僕の生涯でこの2冊だけです。かなり決定的だったと思います。
次はこれ。
- 作者: 赤塚不二夫
- 出版社/メーカー: 竹書房
- 発売日: 2004/12/01
- メディア: 文庫
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ウチは僕が6歳の時に引っ越しをしたんですが、これはその引っ越す前の家の近所にあった助産院の待合室にあったのが、なぜかいつの間にかウチにあったんですね。引っ越すからっていうんでもらったのかなあ。全く憶えてません。引っ越しと言っても校区は変わらない程度のものでしたから、引っ越し後も、母はここの助産院に時々行ってた気がしますので、ますますいつもらってきたのか、いつ最初に読んだのか、わからない。
ただ、熱心に読んだのは小2くらいのときですね。この本にはあとがきがあって、そこで赤塚不二夫は、漫画というのは編集者との共同作業の産物なのだということを書いています。僕はそれで「共同作業」という言葉を覚え、学校の掃除の時間に一本のほうきを二人三人で持って「共同作業共同作業」と言って遊んでいたのでした。その教室がまぎれもなく小2のときのなのですね。
「チビ太に清き一票を!」という副題が付いてたくらいで、チビ太大活躍の巻なんですが、子供心にチビ太のサバイバーっぷりがクールでドライでかっこいいと感じていました。
ちなみに、この、編集者との共同作業について書いたあとがきが印象的だったことを、後年漫画史研究会の後の飲み会の後、みんなで行った高田馬場のラーメン屋で、長谷邦夫さんに話したところ、「あ、それ書いたの俺だな」と言われ、一同爆笑、ということがありました。小2のときはそんな日がやってくるなんてこれっぽっちも思ってませんでした。当たり前ですが。
お次はこちら。
サイボーグ009 (第1巻) (Sunday comics―大長編SFコミックス)
- 作者: 石ノ森章太郎
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 1966/07/01
- メディア: 単行本
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その後、「超銀河伝説」(1980年)公開時に出たムックに、各エピソードの初出が載っていたので、そんな情報の全く載ってないサンデーコミックス版に、それを鉛筆で書き込んだりしてました。今思えば着々と道を踏み外しつつあったわけです。
そしてこれ。
- 作者: 白土三平
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1997/05/01
- メディア: 文庫
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ちなみに父は基本的に右寄りな人で、ちょうど60年安保の頃に拓殖大学の空手部にいたような人生ですから、この作品を階級闘争史観の表現として読んだりってことは、全くなかったんじゃないかと思います。単に時代物としておもろかったんでしょう。
最後はこちら。
- 作者: 大友克洋
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 1983/08/18
- メディア: コミック
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中1の夏で、まさに本が出たばかりのタイミングでした。この頃は、もう本屋で立ち読みという悪行を覚えていたので、なんとなく、カンが働いたのでしょう。これが初めての大友体験でした。チョウさんが壁にめり込む有名なシーンを、人に見せられる前に自分で単行本の流れの中で見られたのは幸福だったなと思います。
我ながら、よくもまあ、こんなにきれいに、小1から中1までの間の心柔らかき日々に、戦後マンガ史追体験みたいなことができたな、と思います。マンガの神様がついてたというか。今、こんな仕事をすることになるのも仕方ないですね。
とは言え、なんでそんなことが可能だったのかと考えると、たとえば手塚全集の刊行だったり、小学館文庫の成功だったりといった具合に、この時期、そうした歴史追体験が可能なインフラが、マンガの世界にできてきていたという背景が見えてきます。その意味では、僕の体験は、決して奇跡のような偶然の産物ではなく、ある程度歴史的な必然によるものだと言うことができるでしょう。
いずれにしても、僕にとってマンガを語ることがそのまま「私」を語ることに重ねられてしまう幸福な時代は、多分この辺で終わります。中2くらいからは次第にロックというか、「ロッキング・オン」周辺の文化に傾倒していきますので、マンガ一辺倒じゃなくなってしまうんですね。考えてみればこれも、僕らというのは中学に入ったらとりあえず洋楽を聴いてみたりする最後の世代なので、やっぱりある意味ではありふれた道を歩んでいるんですが。
私からつなぐ5人の方
今回もバトンは回しません。大事にしまっておきます。それから、もう他のバトンは受け取りませんので、あしからずご了承ください。
しかし、なんだかんだで楽しいもんですね。こういう話は。読む人にとってはどうかわかりませんが、わりと満足なエントリでした。