宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

「酒井七馬伝」をAmazonで5000位以内にする運動

 を立ち上げたいと思います。

謎のマンガ家・酒井七馬伝―「新宝島」伝説の光と影

謎のマンガ家・酒井七馬伝―「新宝島」伝説の光と影

 中野晴行さん渾身の評伝「謎のマンガ家・酒井七馬伝」が出ました。恥ずかしながら私は未読ですが、準備の過程をいろいろとうかがっており、内容の画期的であることは間違いないと申し上げることができます。
 「新宝島」をめぐるさまざまな議論が、その「神話」化に貢献するものであれ、「神話」批判に傾くものであれ、結局のところ、手塚治虫の問題へと収斂して行きがちだったのは、もう一人の作者である酒井七馬という作家が、全くと言っていいほど知られていなかったことにもよると思われます。しかしながら、この神話的な書物の成立に当たって、おそらく手塚と同等以上の役割を果たしたこの作家は、我々が知る以上にはるかに長く、また幅の広い仕事歴を持つのであり、そのことを踏まえるなら、「新宝島」を見る上でも、その共著者たる手塚治虫を見る上でも、ひいては漫画史を単に「戦前/戦後」に区別して見ることをやめる上でも、極めて重要な別の視点が得られるに違いないのです。
 そんなわけで、この本は漫画史に関心を持つ全ての人に読まれるべきものなのですが、著者の中野晴行氏はほとんど物書きとは思われない謙遜癖をお持ちで、Amazonに登録されたその日の日記から、もうこんなことをお書きになっています。

本日からアマゾンでも予約取り扱い開始。
とは言え、7万位からスタートして1万173位が限度。
その後はどんどん後退している。
目標は5000位以内であるが
難しいようだ。
「悪役ランプの編集日誌」2007年2月22日)

 翌日の日記では「8万8000位まで後退していた」と書かれていますが、メガヒット・マンガの新刊じゃないんですから、Amazonに登録された日からガンガン売れ行きが伸びるわけがないじゃないですか。こういう内容の本だからこそ、「ついに出ました!」と積極的に宣伝して回らないでどうするのでしょうか。酒井七馬を本気で再評価させたいのなら、何が何でも売らなければならないと思います。へんな言い方ですが、これは中野さんの問題ではなく、酒井の問題であり、漫画史の問題です。「あたくしの本なんざあ」という謙遜は、この場合、「酒井七馬なんざあ」「漫画史の研究なんざあ」という意味にもなってしまいます。そいつあちと同じ志を持つものにとって困るわけなんであります。
 そんなわけで、マンガ論にご興味をお持ちのブロガーのみなさん、ぜひこの本を紹介しまくって中野さんの目標という5000位以内に入れようではありませんか。大丈夫、「手塚治虫=ストーリーマンガの起源」のマイナス100倍くらいの読む価値はあります。「日本初の本格的漫画史研究」とか「日本初の本格的漫画家評伝」とか銘打つ誇大広告もありません。今どき珍しい、この日本的美徳の持ち主の画期的著作を、大いに盛り上げていきましょう。