宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

羽海野チカ原画展

hrhtm19702011-08-16

 見に来ました。
 感想は後ほど。


 はい、そんなわけで後ほどになりました。新宿西口のマックからお送りします。
 展覧会会場は池袋西武の別館(本館じゃないです。思い切り迷いました)2階の西武ギャラリーです。


http://3lion.younganimal.com/exhibition/


 ハチクロ3月のライオンを中心に、他の作家の小説の表紙絵や挿絵などもあります。
 展示全体のデザインというか装飾は、微妙にもっさいというか安っぽいというか、まあ、百貨店やしね、みたいな感じなんですが、内容は大変充実してました。
 とにかく原画の量が圧倒的。カラー原画の方が多いので、ぽかーんとゆるゆる見続けてるだけでシヤワセな気分になれます。単行本の表紙や連載時のカラー扉などはほとんど全部あったのでは?会場も結構広くて、丁寧に見るとかなり時間かかります。
 あと制作のプロセスが分かるように、アイデアノートやキャラクターのスケッチから、4段階にわたって改稿されていくネームも展示されていて、面白いです。
 ネームというのは、実際の原稿用紙に鉛筆で下絵を描き始める前に、ネーム用のノートや自分の使いやすい紙に、コマ割りやコマ内の絵の構図、セリフとその配置など描き込んで決めていく作業、またはそうして描かれたもののことを言うことが多いわけですが、ま、下描きの下描きみたいなものですね。
 羽海野さんは、B4くらいの薄い青の方眼が印刷された用紙を横長に使って、全体を8分割して、4見開き(8ページ)分のネームを1枚に描いてしまい、それのコピーを取って、要るコマを残して、要らないコマや直すコマは切り落として、みたいな感じで、切り貼りを繰り返して何段階かに分けてコマ割り、構図等をブラッシュアップしていくんだそうです。
 展示されている8ページ分のシーンは4段階のブラッシュアップを経て、最終的なネーム(展示解説では、この最終的なものが「ネーム」と呼ばれていて、その手前の8分割のは「ストーリー構成」の「ブラッシュアップ」と呼ばれてました)は8分割じゃなくて原寸大になってました。
 1枚8分割ネームというのは、羽海野さん独特のやり方だと解説されていましたが、確かに、こういうのを見るのは僕も初めてでした。 
 実際、雑誌連載のマンガのページ数は8の倍数が多いので、ある程度のまとまりの中で構成を考えるには、見通しがつけやすいのかなと思いました。
 実は、今自分が準備中の「武富健治の世界」展(@米沢嘉博記念図書館)でもほぼ同じ感じで制作のプロセスの展示をやろうとしてるので、参考になりました。と同時に、もともと自分が考えてた形の方が、全体的には、若干分かりやすいと思えたので、ちょっと自信にもなりました。単純に言って、マンガは右から左に読むようになってるわけですから、こういう順を追って見るべき展示のパートは動線を左から右にしない方がいいですよね。ま、これは余談ですが。


 ともあれ、ファンにはたまらない、また作品のことをよく知らなくても絵を眺めてるだけで楽しい展示なので、これを機会に友達に羽海野チカを読ませるのにも最適じゃないでしょうか。
 会場限定販売のグッズもよいものが多かったですよ。ポストカードもめっちゃ種類多かったです。
 明後日で終わってしまうので、まだの人はぜひどうぞ。