宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

始まりました!

 「井上雄彦 最後のマンガ展 重版〈熊本版〉」、始まってちょうど1週間過ぎ、今日から2週目に入ります。
 すでに、展示をご覧になったたくさんのみなさんが、ブログやミクシィなどに感想やレポートをお書きになっているので、ざっと読ませていただいています。
 CAMKのブログにもどんどんレポートがアップされてますね。

http://camk.glide.co.jp/blog/index.php?cid=25


 僕は先週の木・金・土と、3日間熊本にいました。
 オープンの前々日の木曜日のことは、いずれまとめて書かせてもらおうと思いますので、今回ははしょりますが、3日間で一番勉強になった日でした。
 翌日、金曜日の日中は、夕方からの内覧会のために東京からおいでになった藤本由香里さんと川原和子さんと一緒に、霊厳洞へ行きました。
 霊厳洞は雲厳禅寺というお寺の境内にあります。霊厳洞が一番奥にあり、その手前の岩肌がむき出しになっている斜面には五百羅漢があります。

 


 みなさんいいお顔してらっしゃいます。とっても見晴らしのいいところです。
 で、ここが霊厳洞。



 おお、これが、井上さんが今回の展示のイメージを得た景色かあ、と。話には聞いていましたが、確かに結構開放感があり、でもやはり、ちゃんと落ち着いて瞑想もできそうな感じのところで、すごくいい気分になりました。
 そして夕方5時から内覧会。「熊本版」の展示を拝見し、さらに感動しました。
 上野の展示も、僕は割と早い時期に行ったおかげでかなりいい環境で見られましたし、その時も、その凄さ、マンガ展としての画期性に圧倒されたわけですが、今回の熊本版の展示は、さらに、凄くなっていました。
 先週初めに熊本入りされた井上さんが会場で描き下ろされた絵で構成された空間が付け加えられ、展示全体の抑揚がさらにはっきりしただけでなく、その他の部分でも、随所で上野のとき以上に演出効果が高められていて、この展覧会が単なる「重版」でなく、むしろ「増補改訂版」と呼ぶべき、「熊本版」独自のものになっていることに、興奮しました。
 井上さんにしても、井上さんを支える優秀なスタッフのみなさんにしても、CAMKの学芸員さんたちにしても、単なる「巡回展」にする気などさらさらないのは分かっていましたから、当然と言えば当然なのですが、実際に形にして見せられると、率直に、心を打たれました。
 内覧会が終わった後は、招待者やプレスの前で、井上さんが、会場入り口付近の、山の絵を仕上げるパフォーマンスがありました。CAMKのブログの写真のフレームの外は、こんな大変なことになっていました。



 何にも見えません(笑)。



 みんな、デジカメやケータイを掲げてモニターで見てるという状態。
 その後、オープニングセレモニーとなり、来賓のみなさんや井上さん自身のあいさつがありました。



 取材の数もすごかったです。
 あいさつの後、鏡割り、歓談、となりました。CAMKのブログにもある通り、井上さん自身のアイデアで、枡酒と、熊本の天然水、そして塩むすび、という渋いおもてなしもうれしかったです。



 僕はお酒が飲めないんですが、この後、藤本さんたちとどっか行くつもりだったのに、おむすびを3個も食べてしまいました。
 セレモニー終了後、もう一度、展示が見られる時間が設けられていたので、あえて最後尾で入場し、お客さんがほとんどいない会場でゆったりと、藤本さん、川原さん、そして熊本大学の跡上史郎さんたちと、あれこれ話しながら展示を見直しました。
 その後は、跡上さんお薦めの好信楽というお店で馬肉三昧。これが激ウマ。塩むすびは2個までにしておけばよかったと後悔することになったのでした。もうちょっと食べたかったにゃー。オーナーシェフ(?)の方が、旅に出るため(!)ゴールデンウイーク明けにお店を閉められるとのことで、残念だけど、来られてよかったと思いました。話も、展示の感想を中心に大いに盛り上がって楽しい夜でした。
 そして翌朝、いよいよ会期が正式にスタートです。



 朝9時、開場の1時間前ですが、既に入口の前に人がたまっています。CAMKのブログにあるように、一番乗りの方は、午前3時半から来られていたようです。すげー。



 当日券売り場の前にも結構、人が。
 10時に開館する頃には、入口前からの行列はかなり大変なことになっていました。



 1階エスカレーター前の巨大バナー。すでにいろんな方のブログに載ってるので、夜バージョンにしてみました。



 当日券売り場も、かっこいいです。
 あと、上野にはなかったのが、この、壁一面に自由に感想を書き込める部屋です。



 初日の夕方ですでにこの状態。これ、どう考えても2週間もしないうちにいっぱいになっちゃいますよね。どうすんだろ。でも、ずっと読んでると、マンガ展というのが、これだけ熱い時間、熱い空間になりうるんだな、というのが実感されます。
 この部屋の三方の壁と、あと写真にもあるように、中央にでっかい書き込み用の箱みたいなのがあるんですが、それぞれ、井上さん自身による最初の書き込みがあります。イノタケを探せ、って感じで探してみるのも楽しいと思います。
 この部屋にはさらに、井上さんが熊本入りしてから描き下ろされたでっかい武蔵の絵の前で記念撮影ができて、しかもその写真を、この展覧会オリジナルロゴ入りの待ち受け画像に出来るマシンまであります。ほんとにこれは、来ないわけにはいかないでしょう。
 初日は約1500人の来館者だったそうですが、夕方にはかなり落ち着いて見られる状況になってました。いろんな方のブログを見ていても、今週の平日は比較的ゆったり見られる時間帯も多かったようですね。熊本版が始まる直前に、井上さんのサイトで大阪と仙台にも巡回することが発表されたため、その近くの地域の方は減るかもしれませんが、上野の時同様、やはり一番強いのは口コミでしょうから、ゴールデンウィークや会期後半の時期は、どんどん人が増える可能性が高いと思います。今のうち、今のうちですよ、みなさん!会場限定販売のグッズもたくさんありますから!
 今週から、関連講座も始まります。最初は明日、日曜日、担当学芸員の冨澤治子さんによる「展覧会というマンガ、その特徴について」。マンガ研究者的にいちばん聞きたいお話なので、楽しみにしています。午後2時から、アート・ロフトにて。みなさんも、ぜひ。