宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

今週の「日本の大衆文化論」は

 僕の担当だったので、つまった鼻とつぶれた喉で、がんばって講義しましたよ。学生さんには耳障りだったと思います。申し訳ない。
 内容は、前回、前々回の重信先生の講義を受けて、「大衆文化としての戦争・マンガ編」ということで、とりあえず、イントロダクション的に昭和17年に出た某書(これが何なのかは内緒っす)掲載の、山腹の地下に作られた秘密の要塞の断面図が、いったい何に載ったものなのか学生さんたちに聞いた後、同様の山腹の地下要塞のイメージが「鉄人28号」や、「ゲッターロボ」など、戦後の(主に)男子向けマンガ・アニメに脈々と引き継がれていることをお見せした上で、「のらくろ」のヒットをきっかけとして戦時期に起こった最初の子供向け物語漫画ブームの中で、〈戦争〉がどのように描かれていたのかを、時期的な変化と作品ごとの差異に着目しながらお見せしていきました。
 そのあと、昭和13年10月に「児童読物改善ニ関スル指示要綱」が出てくるにいたる、教育言説の中でのマンガの「問題」化の流れと、その中で主導的な役割を果たした教育科学研究会の性格について触れ、「指示要綱」の内容と戦後の悪書追放運動などにおける、マンガを「問題」視する議論が、ほとんど同じ論理で成り立っていることにも触れました。すなわち、戦後の子供向け大衆文化における「戦争」イメージが戦時下にルーツをたどることができるのと同様、戦後の子供向け大衆文化に対する批判的な視線もまた、戦時下にルーツをたどることができるというわけです。
 で、「指示要綱」通達後、戦争ものがほぼ一掃されたマンガの世界に登場してくる生活ものについて、少し触れたところで、チャイムが鳴ってしまいました。
 準備不足で時間配分をきっちり詰めてなかったので、用意した図版の3分の2しか消化できませんでした。ぬーん。来週は残りを紹介した上で、大塚英志さんとは別の見方で、宮崎・高畑の仕事につなげてみようかと思ってますが、そこまで果たしていけるのか。努力します。