宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

「イメージ文化史」ワークショップ「マンガ、あるいは「見る」ことの近代」第3回で発表します!

【イベント当日の日付でアップしています】


 早稲田大学総合人文科学研究センターのプロジェクト「イメージ文化史」の一環で行われている連続ワークショップ「マンガ、あるいは「見る」ことの近代」でお話させていただくことになりました。

「イメージ文化史」主催◆ワークショップ「マンガ、あるいは「見る」ことの近代」第3回をお知らせします。
日時  2015年3月6日(金) 13:00〜17:30
場所  早稲田大学戸山キャンパス33号館3階第1会議室
宮本大人
明治大学国際日本学部准教授)
「速度と重力、名前と音声
― 大正末から昭和戦前・戦中期の子供向け物語漫画におけるキャラと空間 −」
精緻な実証作業に裏づけられた強靭な思考で日本のマンガ研究を牽引してきた研究者による、4時間超の連続講義。近年のマンガ理論の展開を踏まえつつ、この時代の作品群を検討する。前半では主に速度と重力という観点から空間と時間の表現が、後半では主に名前と音声という観点からキャラの表現が論じられる予定だが、両者が密接に関連していることは言うまでもない。マンガ研究に関心を持つあらゆる人に聞いてほしい!


http://flas.waseda.jp/rilas/2015/01/2537/


 何だか過分なご紹介をいただいていますが、発表の内容自体は私から事前にお伝えしているものです。
 この連続ワークショップは2013年度に「マンガ的視覚体験をめぐって−フレーム、フィギュール、シュルレアリスム−」として3回実施されており、その成果は『マンガを「見る」という体験』にまとめられています。アマゾンで取り扱いがないのでhontoにリンクしておきます。


http://honto.jp/netstore/pd-book_26267905.html


 この本は夏目房之介さんも書かれているように、マンガ論の水準を更新する大変刺激的なものでした。


http://blogs.itmedia.co.jp/natsume/2014/08/post-4dc4.html


 この本に限らず、ここ数年、泉信行さん、岩下朋世さん、三輪健太朗さん、佐々木果さんらによる、『テヅカ・イズ・デッド』以後とも言える、マンガ論の進展があり(ティエリ・グルンステンらフランスの研究者の仕事の紹介も進みました)、いよいよ本格的に「置いて行かれてる」感が出てきていたのですが(笑)、このワークショップをコーディネートしている鈴木雅雄さんと中田健太郎さんから熱烈なお誘いをいただいて、ここらで再スタートを切らねば研究者として終わる(というか始まってもいねえよ)という危機感とともに、発表を引き受けさせていただきました。
 北九大でも明大でも教育研究以外のところで忙しすぎて、そのうえ父のがん治療(&それにまつわるもろもろ)というような要素も入ってきてしまって、研究者としてはセミリタイアですなどといって苦笑するしかない日々が続いていたわけですが、昨年春からのトレーニングの効果で少し心身ともに元気になってきたので、時間はなくても無理にでも研究を少しずつやるという気力が出てきました。西日本新聞の連載コラムも昨年の春に辞め、中京大学の集中講義も昨年夏を最後に辞めさせていただきました。田舎の両親のサポートに使う時間が増えている(家業の手伝いも遠隔でできるものを少ししています)こともあるのですが、どうにかして少しでも研究の時間を作る努力をしています。今回の発表が研究者としての再デビュー戦だという意気込みで臨みたいと思っています。

 
 2014年度は上記の『マンガを「見る」という体験』を踏まえて、三輪健太朗さん、岩下朋世さんの発表が行われており、私は第3回ということになります。
 先日ちょっと触れた、1月18日の私的な勉強会というのは、この三輪さん岩下さんの発表を、聞きに行けなかった私のために一日でまとめて再演してもらうというものだったのでした。何様なんでしょうか。せっかくなのでと、同じく聞きに行けなかった研究者のみなさんにも急きょ声をかけさせていただき、大変充実した会になりました。三輪さん岩下さんありがとうございました。
 というわけで、今度の発表では、上で触れたような、今日のマンガ論の到達点を踏まえて、私が博士論文の対象にしている時代の作品群を見たときどのようなことが言えるのか整理したいと思います。
 新しい理論的枠組みや分析概念を提出するということはできないと思いますし、「近代」という大きな問いに届くお話にできるのかも不安ですが、とりあえずあまり知られていない時代の状況を、なるべくたくさんの図版を使って、現在のマンガ論の解像度でお見せできれば、あとはみなさんからいろいろと教えていただけるのではと期待しています。


 単純に多くの方にとって初めて触れるであろう作家・作品をたくさんご紹介しながらお話しますので、平日なのが恐縮ですが、「手塚治虫以前」に興味がおありの方はぜひお越しいただければと思います。