宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

「鹿島茂コレクション2 バルビエ×ラブルール アール・デコ、色彩と線描のイラストレーション」展


 昨年の第1弾、グランヴィル展に続く鹿島茂コレクション展第2弾は、アール・デコ期の二人の挿絵画家の展覧会でした。概要は練馬区立美術館のページをどうぞ。


http://www.city.nerima.tokyo.jp/manabu/bunka/museum/tenrankai/kashima2.html


 副題にある通り、色彩が素晴らしいバルビエと、モノクロの線描画が本領のラブルールという対照的な二人を、前回同様圧倒的な質量のコレクションで見せてくれます。展示手法はオーソドックスですが、これでもかってくらい詳しい解説と、展示品そのものの美しさ(保存状態もすばらしい)で、堪能させてもらいました。
 恥ずかしながら、去年のグランヴィルは、展示を見る前から名前と多少の作品は知っていたのですが、今回の二人については初めて知ったような次第。
 しかし、近代のカリカチュア、漫画に興味があるなら、やはり当時の文脈の中で、出版文化や印刷文化、そしてイラストレーション全般の動向を知っておくことは重要です。ありきたりな言い方ですが、視野が広がるし、思考が刺激されます。
 当時のファッション文化を知る上でも不可欠といった感じのバルビエの作品は、もう見とれるばかり、という感じでしたが、ラブルールのは、昆虫や水生生物の描き方など、気になる細部がたくさんあって、いろんなことを考えながら見ました。
 僕が知らないのはだいぶまずいんですが、世の中的な知名度で言っても、日本ではミュシャロートレックばかりが有名で、こうした優れた挿絵画家の知名度はまだまだ不十分という気がします。
 前回のグランヴィル展に続いて、今回の展覧会も、すごい質量の図録が求龍堂から一般書籍として出版されています。


グランヴィル―19世紀フランス幻想版画 (鹿島茂コレクション)

グランヴィル―19世紀フランス幻想版画 (鹿島茂コレクション)

 

 今回の図録も、展覧会場には掲げられていない(というか掲げられる長さじゃない)鹿島茂先生による長文の解説が収録されていました。
 それにしても、去年も書きましたが、とても、一応同じ職業の人のコレクションとは思えませんでした。すごいとしか言いようがないです。眼福でした。