宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

今日の「比較映像(欧米)」

 は、1910年代から30年代のアメリカ合衆国におけるanimated cartoonの展開を駆け足で。娯楽産業としてのアニメーション・ビジネスの発展の過程における、製作過程の分業化・合理化の進展や、キャラクター・ビジネスの発展、1930年代半ばの映画製作倫理規定の適用強化の影響にどう対応したか、そしてそうした流れの中で表現のスタイルはどのように変わって行ったか、といった点に注目しながら、お話ししました。
 お見せしたのは、無声映画時代は「フェリックス」(サリヴァンメスマー)と「アリス・コメディーズ」(ディズニー)のシリーズからそれぞれ1本ずつ、トーキー以後は、ミッキーマウスの「蒸気船ウィリー」と、フライシャー兄弟の「ベティ・ブープ」から「ベティの白雪姫」、さらに「シリー・シンフォニー」シリーズからマルチ・プレーンカメラ導入の「風車小屋のシンフォニー」と、対するフライシャー「カラー・クラシック」からは、マルチ・プレーンの先駆けとも言えるセット・バック撮影を、ただそれをひけらかしたいだけとしか思えない形で利用した(笑)「Kids in the Shoe」、でした。DVDと機材の相性の問題か、DVDの傷の問題か、「蒸気船ウィリー」が上映できないトラブルがあって申し訳なかったんですが、ま、これはどこのレンタル屋さんにもありますから、ということで、各自見ていただくことを希望して終わりました。
 この時期のアメリカのカートゥーンは、日本版のソフトでまとめて紹介するのが難しかったんですが、ちょうど今年、素敵なシリーズがTDKコアから出たので、助かりました。もちろん、アメリカのネット通販で取り寄せたソフトも使ってはいるんですが。

I LOVE Cartoon カートゥーン★だいすき [DVD]

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I LOVE Cartoon フェリックス★だいすき [DVD]

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I LOVE Cartoon ベティ★だいすき [DVD]

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I LOVE Cartoon オリーブ★だいすき [DVD]

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 このシリーズ、おしゃれなカフェと雑貨が大好き!みたいな女の子層を中心に狙った作りになってて、ちゃんとした解説とかはついてないんですが、作品の数とセレクションの幅の広さはなかなか画期的です。あんまり話題になってないっぽいですが、アニメ研究の専門家から見ると色々問題があったりするんでしょうか。
 でも、フェリックスのシリーズや、ベティ、ポパイ、カラー・クラシックなどのフライシャー系はもちろん、アリス・コメディー・シリーズだけで7,8本、ディズニーが版権を奪われてしまったいわくつきの「しあわせうさぎのオズワルド」も入ってるし、ポール・テリーの「イソップス・フェーブル」シリーズも二つのソフトに8本ずつくらいと、入門者向けにはなかなかのラインナップですよ。
 ちなみにこの辺の、初期のアメリカの動向について適切な概論としては、Giannalberto Bendazziの「カートゥーン:アニメーション100年史」の翻訳がネット上で公開されていますので、ぜひこちらをどうぞ。
http://homepage1.nifty.com/gon2/index1.html
 これはほんとに研究者の鑑というべきすばらしい仕事ですが、お名前を出されていないということは、誰が翻訳されているかはおおっぴらに言わないほうがいいのかな?とにかく、すばらしいです。