宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

以下は

蛇足的補足です。
リーフレットによれば、今回復元されたこの「バクダット姫」は、全8巻だったとされる公開当時のヴァージョンとは違い、全6巻にまとめられた再編集版のようです。たしかに、途中から説明もなく急にペルチャ王子がいなくなったり、アーメット王子が象牙の小箱を手に入れるために乗り越える難関が、本当はもう少しありそうに見える演出になっていることなど、完全版には、まだ「何か」あるかもと思わせます。これからアニメーション氏に興味を持つ多くの方に見られていくべき重要な作品が、今回こうして再現された意義は非常に大きいと言うべきでしょう。福岡市総合図書館、えらいッ!
今回、作品の上映に先立って、この「バクダット姫」を含む、約800巻という膨大なフィルムが、寄贈されてから上映可能なまでに復元されていく過程を収めたビデオが、館の担当者の方の解説とともに15分ほど上映されました。これも、アーキヴィストの仕事に興味のある僕にとっては、大変面白く、ああなんて立派な人たちなんだ、という尊敬の念を抱いた次第です。
鷲谷花さんによる愉快な紹介があるので、あらためて書きませんが、「海魔陸を行く」の方も期待にたがわぬ珍品で楽しかったです。しかも、今回上映されたものは、鷲谷さんがご覧になったフィルムセンターのヴァージョン(大阪のプラネット映画資料館所蔵のフィルムを元にしたもの)とは微妙に違うものらしく、いいもん見たな、と思います。こっちのは、なぜかタイトルやスタッフロールがみんな英語なんですね。しかもナレーターも、実際は徳川無声なんですけど、KEITHなんとかっていう向こうの人の名前になってるし、監督の名前もほんとは伊賀山正徳なんですけど、こっちのクレジットでは「SHUN INO」となってるという。輸出用にちょこっと手を入れて、ナレーションも吹き替えるつもりがそこまで行かなかったとか??こちらもまだまだ「何かある」って感じですね。
あ、最後に「バクダット姫」に関する重要な(かも知れない)細かい情報を。ちゃんと控えられなかった冒頭のスタッフロールの中に、「字幕:大工原章」というのがあったんです。大工原氏と言えば、これは僕でも知っている、のちに東映動画のアニメーターとして、森康二氏とともに、初期の東映劇場用長編作品を中心的に支えていく方ですね。大工原氏もまた、昭和17=1942年の芦田作品にその名が見えますから、この作品に参加してるのは当然なんですが、「字幕」ってのがよくわからない。トーキー映画ですし、字幕なんてなかったわけで、いったい何のことなのやら。もしかしてオレが見間違えたのか?でも「字幕」と見間違える単語って何?多分「字幕」で合ってます。アニメーション研究者のみなさん、よろしく御調査のほど、お願いします。

*このエントリは、自宅で一切参考文献等見ずに書いていますので、明日研究室でいろいろ見直して補足や訂正があったら、書き直します。