宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

とはいえ、

それでもなお、この作品、50分間飽きずに見ることができました。むしろ上に述べてきたような単純明解さが、いいんですね。とにかく一つ一つの場面ごとに、キャラクターのアクションで楽しませようというエンタテインメント性は、たっぷりあるわけです。芦田に限らず、1930年代までのアニメーションの動きって、例えばキャラクターが飛び跳ねる時に、体が地面から浮き上がる時のスピードと落下する時のスピードがほぼ同じだったりするんですね。無重力状態っぽいんですよ。基本的にフルアニメなんで、滑らかには動くんですが、動きの緩急のメリハリが乏しいことが多くて、今から見るとすごく不思議な感じなんです。で、それって、僕は結構好きなんですよ。何か変な夢を見てるみたいで。
この作品にも、そういう、浮上する時も落下する時も同じ速度、みたいな動きが結構残ってる一方、意外とちゃんと気持ちのよい緩急が付けられてる動きのショットもあって、これは単に各シーンのアニメーターの能力の違いの問題かもしれないんですが、とにかく見ていて楽しい動きを、あれこれ取り揃えて手を変え品を変え見せてくれてる、という感じでした。凝ったアングルのショット(アーメット王子を乗せて空を翔る天馬と、その影が下の方の雲に映ってる様子を捉えた俯瞰ショットとか)や、アクションのアイデアが楽しいシーン(悪魔の城みたいなところで、生き物めいた炎にアーメット王子が翻弄されるシーンなど)もありましたし、戦前・戦中のアニメーション作品に多い、「画面の中をたくさんのキャラクターがわらわらわらわら動く」面白さをねらったショットも多くて、愉快でした。こういうショットって基本的には同じ動きの繰り返しなんですけど、動いてるものの数が多いのって、えもいわれぬ気持ち良さ(=気持ち悪さ)があって、いいわけです。