宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

「バリアを越えるイマジネーション」(明治大学大学院国際日本学研究科開設記念シンポジウム)のお知らせ

【開催当日の日付で載せています】


 私の所属する明治大学国際日本学部は、この春最初の卒業生を送り出しましたが、この学部に接続する形で、4月から、大学院国際日本学研究科が開設されました。その開設記念シンポジウムとして、「バリアを越えるイマジネーション」と題したシンポジウムを企画しました。

 価値観の多様化という言葉は、良い意味で受け取られることが多いようです。しかしそれは、世界を理解する仕方自体の多様化を意味します。同じ世界に生きていながら、隣人同士が同じ出来事をまるで違う仕方で理解してしまうことがしばしば起こります。摩擦といさかいを生む障壁は、国と国の間に限らず、今やいたるところにあるように見えます。ではその障壁=バリアは、どのように乗り越えることができるのでしょうか。


 明治大学大学院国際日本学研究科は、日本の文化と社会について、国際的な視野から深く学び、問うために、2012年4月に開設されました。その最初のシンポジウムに、バリアを越えるイマジネーションというテーマを設定しました。多様な現場で活躍されるみなさんの、タフで柔軟に生きる知性の声が、響き合う場にお立ち会い下さい。


●国際日本学研究科開設記念シンポジウム 「バリアを越えるイマジネーション」
 日 時  2012年12月15日(土) 13:00〜16:10
 会 場  駿河台キャンパス リバティタワー1階 リバティホール



【第1部 基調講演】 13:00〜14:10
 演 題  「The 『地球のステージ』」
 講 師  桑山 紀彦 氏(心療内科医,NPO法人「地球のステージ」代表理事」)


The「地球のステージ」
「地球のステージ」は、映像と音楽をシンクロさせた新しいタイプの公演です。それは「講演」ではなく「公演」と示すところからも、「ステージ」をその場でつくり出すものです。そこにはいくつかのキーワードがあります。
 人は常に自分の人生において主人公です。世界中で、そして被災地で。その「主人公性」に焦点を当て、人を紡ぎ出す構成になっています。従って一つ目のキーワードは「主人公性」。
 そして、人は自分の人生を物語として創り上げていく力を持っています。誰もが自分の人生という物語を生きており、聖書でさえイエス・キリストという一人の人物の言葉によって綴られた物語です。従って、二つ目のキーワードは「物語性」。
 紛争、災害、貧困など様々な困難に出遭ってもなお、人はその人生において主人公であり、物語を持っています。それを音楽と映像、語りと写真という4つのメディアを秒単位で組み合わせて構成しているのが「地球のステージ」の骨格です。
 桑山紀彦は案内役に過ぎません。
 そのステージの中で、以下にして人の人生に触れ、そしてそれが自分の人生へ向かってかえってくる。「では自分は何をなすべきか」。その問いはある種の前向きなエネルギーとなって見ている人の心に満ちていきます。
 それを是非体験して頂くと共に、その構成とシンクロ率を全身で感じて頂けると幸いです。               桑山紀彦(「地球のステージ」案内役、心療内科医)



【第2部 シンポジウム】 14:20〜16:10
 テーマ  「バリアを越えるイマジネーション」


 身体は、この世界を生きる私たちに「自分」の輪郭を与えてくれるものです。しかし、その輪郭は、物理的な皮膚とぴたりと一致するものでしょうか。薄着の時と厚着の時、杖をつかざるを得なくなった時、バットを持ってボールを打つ時、私たちは違う身体感覚で世界と触れ合い、自分の輪郭が普段とは違っていることを感じています。「視覚障害者」ではなく、独自の文化を持つ「目で見ない族」なのだと言われた時、私たちはハッとします。体系化された修行を通じて特定の作法を身につけると精神のあり方も変わることを実感します。異なる身体感覚に基づく「異文化」に驚くことから、このセッションを始めたいと思います。


 登壇者  片山 真理 氏(アーティスト)「わたしをなぞっていくと、あなたに届くの」
      長棟 まお 氏(詩人)    「目で見るだけで気が済むのはなぜ?」
      吉村 昇洋 氏(禅僧,臨床心理士)「禅とイマジネーション」
 司 会  宮本 大人 国際日本学研究科准教授



http://www.meiji.ac.jp/ggjs/info/2012/opening_symposium.html

 私、ミヤモトと、当研究科の横田雅弘先生、大須賀直子先生の3人で、夏休み前から企画を練り、ほかではありえないような顔合わせが実現しました。

 
 まず第1部の基調講演は、NPO法人「地球のステージ」の代表理事心療内科医の桑山紀彦さんにお願いしました。9月には『AERA』の「現代の肖像」にも取り上げられたので、ご記憶の方も多いのではないでしょうか。


 「地球のステージ」の極めてユニークな活動内容については、下記のURLからホームページをご覧ください。
http://e-stageone.org/

1996年1月15日よりはじまった、ライヴ音楽と大画面の映像、スライドによる語りを組み合わせた、まったく新しいタイプの”非営利”「コンサート・ステージ」です。

世界で起きている様々な出来事を、講演形式ではなく、音楽と大画面のビデオ、スライドに写しだし、語りと曲で構成していく「映像と音楽のシンクロ」ステージです。
http://e-stageone.org/plan/about-stage-content


 今回は普段のステージではなく、なぜこのようなユニークな「公演」という形態での活動に至ったのか、そこに働いているイマジネーションの力についてお話しいただきます。また、宮城県名取市で開業する桑山さん自身も被災者となった東日本大震災とその後の活動についても、触れて下さる予定です。
 桑山さんが「公演」ではなく「講演」をなさるのは珍しいのではないかと思いますので、非常に貴重な機会だと思います。


 第2部のシンポジウムに登壇していただくみなさんも簡単にご紹介しておきます。
 まず片山真理さん。アートアワードトーキョーー丸の内2012のグランプリを受賞した気鋭のアーチストです。両足の義足を表現の起点にしつつ、私(たち)の身体やアイデンティティの輪郭について、深く考えさせる作品・パフォーマンスで、ドキドキさせられます。当日も、多分、単なる話題提供のお話、にはならないと思います。
 ホームページはこちら。

http://shell-kashime.com/


 ツイッターはこちら。


https://twitter.com/katayamari


 次に長棟まおさん。全盲の詩人で、以下の論文集に収録されている「手による認識」という論文でも知られる方です。近年は空間プロデュースへの関心から、テディベアの展覧会を毎年企画されています。「目で見るだけで気が済むのはなぜ?」というタイトルに、私たちが目以外の感覚で開かれる世界の豊かさを十分には知らないことに気付かされます。


手は何のためにあるか (何のための知識シリーズ (3))

手は何のためにあるか (何のための知識シリーズ (3))


 最後は吉村昇洋さん。禅宗のお坊さんです。一時期、私も以前出ていた漫画史研究会という研究会に来てくれていて、なにげに長い付き合いです。永平寺で精進料理を修め、精進料理のレシピを紹介するブログや、雑誌連載のエッセイ、そして臨床心理士としての活動など、多岐にわたるユニークな活動をなさっています。
 ブログ「禅僧の台所」は、「虚空山彼岸寺」という超宗派のお坊さんたちのやっている仏教サイトの中にあります。


http://higan.net/apps/mt-cp.cgi?__mode=view&blog_id=65&id=3


 吉村さんには片山さん、長棟さんのお話を受けて、仏教、禅宗の立場から見たときに、お二人のお話がどのように捉えられるかも含め、禅とイマジネーションというお題でお話しいただきます。
 お三方に15分から20分程度お話しいただいた上で、ディスカッション、という流れを予定しています。
 なお、この第2部のシンポジウムは不肖、私が司会させていただきます。
 いや、これ、やばいですよ。ほんとにちょっとあり得ないようなメンバーで、大学院のシンポジウムではありますが、司会の私以外、いわゆる研究者は一人もいないという異色のシンポジウムです。


 漫画やアニメを直接扱うわけではありませんが、それに深く関わるというか、その根底をなすイマジネーションの力に迫る、刺激的なセッションを組むことができたと思っています。
 


 チラシのPDFはこちらからダウンロードできます。登壇者のみなさんの詳しいプロフィールやそれぞれのお仕事を表す写真が載っています。
http://www.meiji.ac.jp/ggjs/opening_symposium.pdf


 ということで、年末のお忙しい折ではありますが、ぜひぜひ、多くのみなさんにお越しいただければと思っています。専門的な学術用語は一切必要ないのに、本当の意味で知的な興奮が得られる時間を作り出したいと、張り切っています。ご期待下さい。よろしくお願いします!