宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

何ていうか…実験かな?

 さて、そんなわけで、ギリギリになってきてる展示の準備ですが、コミックナタリーさんにも情報出ましたね。


http://natalie.mu/comic/news/56571


 こちらにもある通り、今回、展示スペースのうち、壁面を使って「鈴木先生」の制作過程が見える展示を考えているのですが。



 この間取り図みたいな図面が、その壁面の展示プランです。今回僕が展覧会全体の監督だとすると助監督的な仕事をして下さってるヤマダトモコさんが、採寸して作ってくださいました。
 全体を上段・中段・下段の3段構造にしています。
 上段は、武富健治イラストレーションズのうち、大判のものを3点展示します。
 中段に、「鈴木先生」の作り方、を展開します。
 下段は、詳細な武富健治年譜(その年に影響を受けた作品、その年の主要作品入り)パネルになります。
 中段は、さらに三段構造になっていて、真ん中に「鈴木先生」の特定のエピソードの特定のシーンの原稿を6点、その上の段に同じシーンのネームのコピー、下の段に解説のパネルが来ます。一番右にはプロットや着想を示すメモなどが入り、一番左には、テレビドラマ版「鈴木先生」の同じシーンのシナリオのコピーと、そのシーンのスチル写真が来ます。
 壁面の展示は4カ月の展示期間の中で、ひと月ごとに4期に分けて、全面的に展示替えします。
 第1期は「げりみそ」、第2期は「恋の終わり」、第3期は「掃除当番」、第4期は「鈴木裁判」になります。
 上段の大判イラストも、ある程度これらのエピソードとリンクする感じで、全面的に展示替えします。
 な・の・で、武富ファン、「鈴木先生」ファンのみなさんには、ぜひ4回来ていただければと思います!

 
 チラシ等の案内文にも書きましたが、今回、過剰なる武富ワールドにご招待するために、展示自体ももう過剰にやろうというコンセプトで準備してきました。
 人より大きい巨大描き下ろしスズセンポスター原画があるだけでも十分過剰なのに、展示ケース32箱に色々詰め込んで、「古代戦士ハニワット」の作者自身によるフィギュアがあって、ポスター描き下ろし過程の記録映像も見られて、さらにこの壁面です。


 実際、この図面を見て、僕自身吹き出してしまったんですが、雑誌か!っていうレイアウトになってます。ギッチギチです。今どきの美術館・博物館ではまずやらない展示の仕方です。この広さの壁なら、力のある原画が4〜6点程度あれば、十分展示は成立するんです。でも、「武富健治の世界」展には、そんなんじゃ全然足りないんですよ。

 
 もうね、展覧会というものを見なれている人にも見慣れてない人にも「何じゃこりゃ!?」って思われるような密度にしちゃいます。それでどう見えるか、まだ実際にできてないので僕自身にもはっきり分かりませんが、頭の中では、ドラマ版「鈴木先生」でスズセンが麻美さんにいうセリフ「何ていうか…実験かな?」がいつもリフレインしています。


 米沢嘉博記念図書館ていう施設自体が、いろんな意味で常識外れな施設ですし、武富健治という作家も「常識」を根本から問い直し続けるような作風の作家です。である以上、ここで行われるこの作家の展示は、漫画展だけでなく展覧会一般の常識に挑戦するようなものでありたい、と思っています。実際、そこまでぶっ飛んだ展示にできるか分かりませんが、できる限りの実験を繰り広げたいと思っています。
 今のところ、他館への巡回の予定はありません!この4カ月を、お見逃しなく!