宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

震災に際してのゼミ生へのメッセージ

 っていうほど、大げさなものじゃないんですけど。
 昨日今日の予定だった2年ゼミのゼミ旅行が無くなったので、その時間を少し使って、ゼミの掲示板に、書いたものです。
 長文になったので、もしかして、こんなものでも参考にしてもらえることもあるかなと思い、ブログにも載せてみることにしました。
 書いたのは3月15日の15時半くらいです。しばらくブログのトップに来るように、日付をとりあえず4月2日付にしています。この日付にさして意味はありません。3月31日付の告知より上にしたかったのと、なんとなく、4月1日はちょっとな、と思いまして。
 情報の氾濫に加担するだけのような気もしますが、ま、大方の人はツイッター見てるでしょうから、ちょっとのんびりブログで長文読みたい方だけ、ごらんいただければ。
 では、以下、書き込みのほぼ全文の転載です(2011年3月15日、記)。


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 ミヤモトゼミのみなさんへ


 震災から4日経ちましたが、広い意味での「震災」は、まだ続いていますね。


 被災地域に実家があるみなさんについては、これからも様々な形でご苦労があるかと思います。

 
 大学としても、今、具体的な支援の形を検討中のようですし、ゼミの中でも、お互い助け合っていきたいと思います。


 実家がある、知り合いがいる、などで、被災地域に直接かかわりのある人は、自分のできる範囲で出来ることをするのがいいと思います。


 が、善意に基づく行動が「ありがた迷惑」になる可能性については、常に注意しておく必要があります。


 また、特に被災地域に知人などはいなくても、「自分も何かしなきゃ」と何らかの行動をしている人もいるかもしれません。
 その場合も、上に書いた「ありがた迷惑」の危険については、自戒してほしいと思います。


 また、特に知り合いもいないし、自分で何もしてないんだけど、つい、ずっとテレビやネットを見てしまって、気が滅入る、不安が募る、といった状態の人もいるかと思います。


 節電も求められていることですから、思いきって、電源を切りましょう。
 こういう機会にこそ、ゆっくり、じっくり、普段読まない本や漫画を読んではいかがでしょうか。


 近所の公園で体を動かしたり、自転車で出かけたりするのもいいでしょう。
 季節は着実に春に向かっているので、こんな大変な時だからこそ、毎年と同じように、草は青くなり、花のつぼみは膨らんでいることの素晴らしさを、感じることができると思います。


 あるいはまた、徒歩や自転車で街に出て、今の街の様子を、観察するのもいいでしょう。
 自分の身近なスーパーやコンビニや駅前の繁華街が、どんな様子なのか、自分の五感で確認することで、マスコミの報道とのギャップを発見することもできるでしょう。


 それでもやっぱり、いろいろ気になってテレビも見ちゃうしネットも見ちゃうじゃん…、って人は、頑張って、主体的にメディアの状況を観察するつもりになってみましょう。


 テレビ各局の報道姿勢はどう違うのか?
 テレビと新聞、ラジオ、インターネットの違いは?
 自分の友人・知人・好きなアーティスト、あるいは自分自身は、ツイッターミクシィやブログで、どんなことをどんなふうに発信しているのか?
 そしてそれは、今のメディアの状況に、どう参加し、影響を及ぼしていることになるのか、少し距離を置いて見てみましょう。


 このゼミは、メディアと大衆文化、サブカルチャーの関わりを考えることがテーマのゼミです。
 その観点から、自分たちの生活にとって切実な問題を考えることのできる、格好の機会でもあります。


 こうした意識を持って、さまざまなメディアの情報に触れ、また自分自身メディアを使っていく(友達にケータイでメールを回したりする小さな行為もそこに含まれます)上で、ヒントになる、一つの判断基準を示してくれる、ネット上の「意見」(単なる「情報」ではなく、発言者自身の考えを刻み込まれた議論としての)を、いくつか紹介しておきたいと思います。


 すでによく知られたものばかりですので、みなさんもお読みのものも多いかもしれませんが、斜め読みではなく、ぜひ、一字一句朗読するように、熟読してください。




 まず、情報との付き合い方以前に、人として、こうした状況の中で、どういう振る舞いをすべきかの指針を与えてくれるものを挙げます。


(1)陸上競技為末大選手のツイートを二言だけ。


http://twitter.com/daijapan/status/47061980250513408


http://twitter.com/daijapan/status/47046989241782272


 上のツイートの方が多くリツイートされているようですが、俺としては下のツイートを、より強調したいと思います。


(2)思想家の内田樹氏のブログ


http://blog.tatsuru.com/2011/03/13_1020.php


 「寛容」、「臨機応変」、「専門家への委託」。




 次に、今回、ネット上で、さまざまな、デマや、あいまいな情報が飛び交っています。


 そうした情報との付き合い方を、しっかり勉強するためにも、まずは社会学者の荻上チキ氏のブログのこちらを。


(3)荻上式BLOG「東北地方太平洋沖地震、ネット上でのデマまとめ」


http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20110312/p1


 単にたくさん列挙してあるのではなく、その解説を読むことを通じて、ネット上の情報の信頼度の測り方を学ぶことができます。
 続編のエントリもあります。


http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20110314/p1




 この辺まで読んで疲れてきたら、我らが井上雄彦先生が、パソコンやスキャナを使わず、iPadで描いて直接アップし続けている「Smile」シリーズを見ましょう。


http://twitpic.com/photos/inouetake


 震災の前から描き続けられていますが、震災後、「祈る」の一言以後、すでに40点ほどの絵が描かれています。
 井上さんのツイッターはこちら。


http://twitter.com/inouetake


 「Smile」シリーズはポストカードとして発売、収益金を義捐金に、という方向で動いているようです。
 BEAMSが同じくTシャツにして、という動きもある模様。


 とりあえず、こんな感じでしょうか。



 それと、明治大学からのお知らせは、マメにチェックするようにしてください。


 大学サイトのトップページ。


http://www.meiji.ac.jp/index.html


 震災関連記事のまとめページ


http://www.meiji.ac.jp/koho/disaster/info/


 特に、「【重要】東北地方太平洋沖地震に伴うボランティア活動について
」と題された以下のページは、「自分も何かやりたい」と思っているみなさんは、ぜひ熟読をお願いします。


http://www.meiji.ac.jp/koho/hus/html/dtl_0007668.html
 

 以上です。




 最後に改めて、為末選手の上のツイートを。

感情を強要しない。効果的で自分にできる事を淡々と。緊急時はわかりやすい貢献がヒーローに見える。本当はあなたが明日も淡々と生活して日本を動かす事が最大の貢献。自分の居場所を間違えない


 「自分の居場所を間違え」ていないかどうか自体、自分で判断できない、と感じる人もいると思います。
 当然です。
 こういうときには、「自分の居場所」自体がぐらついてしまうのですから。


 重要なことは、「自分の居場所」がぐらついているこの感覚自体を、忘れないようにすることです。
 「自分の居場所」がいかにもろい地盤の上にあったかを、見つめ直すことです。
 「自分の居場所を間違え」ていないか、という正解のない問いを、続けることです。


 「自分の居場所」はいつだってもろいのだし、人は「自分の居場所」を変えていくものなのだし、常に「間違えない」でいることなど不可能です。


 大事なのは、この、常に自分が今なすべきことは何かという問いを携えて、行動することです。
 いつも人の言葉に謙虚に耳を傾け、しかも自分自身で思考し、試行すること。
 簡単なことではありません。僕も今、こうしてこんな長文を掲示板に書きつづっていることが、今なすべき最良のことなのか、不安がないわけではありません。
 みんな不安です。悩みながら生きています。でも、生きてるんですよ。今日も、生きることができている。


 そのことに感謝しながら、できる限り「淡々と」日々を過ごしたいと思います。