宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

「夏休み!まんが教室〜飛び込め!まんがの世界〜」報告

 えらい遅くなりましたが、8月27日に行なわれたまんが教室のご報告を。



 北九州市主催の子ども文化ふれあいフェスタの一環として行なわれたこの教室、去年は、福岡の専門学校の漫画コースの先生と生徒さんに依頼して行われたんですが、今年はk.m.p.にお任せいただきました。
 市の文化振興課のみなさん、特に学芸員の柴田さんと、k.m.p.のみんなで、企画から教材の準備、当日の運営までを全部自前で(って言い方は変かな、プロの手を借りずに、というか)進められました。『Comi9!』は最後の仕上げのとこは僕も校正を手伝いましたが、こちらに関しては、当日まで、たまに報告を聞くくらいで、どんな教材が用意されてて、どんな運営・進行になるのかも知らない、というくらい、まるっきりタッチしてませんでした。
 教室は11時から12時、13時から14時、15時から16時の、各1時間ずつ、3回行われました。小1から小6までを対象に各回30名定員で募集が行われたんですが、大変人気が高く、2倍以上の倍率になったようです。
 小1から小6まで、ですからレベルにかなり差があるはずなので、1時間一律に一人の先生が進めて行く形式では、飽きちゃう子もついてこれない子も出てきます。1回限りの入門的な教室ですから、子供たち一人一人が、楽しかった、もっと描いてみたい、という実感をもって帰ってもらうことが重要です。
 そこで、k.m.p.のメンバーの多さを生かして、テーブルごとに大まかに学年を分け、各テーブルに2名前後、1・2年生のテーブルには少し多めにメンバーが張り付いて、個別にアドバイスしていく形がとられました。




 教材は共通のモノを、完全にオリジナルで用意しました。テキストと、実際描き込んでいく教材です。下の写真の、テーブルの上に置いてあるのがテキストですね。



 テキストは、謄写版印刷でホッチキス留めですけど、内容はかなりしっかりしていて、「その1:キャラクターを描いてみよう!」、「その2:キャラクターに表情をつけよう!」、「その3:キャラクターをしゃべらせよう!」、「その4:漫画を描いてみよう!」、「その5:面白いお話を作ろう!」の5項目。



 各1ページで、略画でキャラ絵を描く、表情を分かりやすくする記号、フキダシの形、4コマ漫画の仕組み、キャラクターにボケ役とツッコミ役を作ると面白いお話が作りやすいかも、といったシンプルなアドバイスが挿絵入りで載っています。
 教室の初めに、全体に説明するのは4コマ漫画のとこだけで、後は、みんなそれぞれ自分がやりやすそうな教材に直接とりかかかってもらいます。



 教材は、絵が苦手な子もとっつきやすいように、段階別に7種類用意されていました。
 4コマとも、絵は入っているけど、セリフが入っていないものが2種類、4コマともセリフは入っているけど絵が入っていないものが2種類、3コマ目まで絵もセリフも入っているけど4コマ目が空欄になってるものが2種類、枠線だけのもの、ですね。この中から、自分がやりたいのをやりたい順にやってってもらうというわけです。全部やってもいいし、いくつかだけでもいいと。
 半分だけ紹介すると、こんな感じ。




 これって、コロコロコミックとかの読者欄なんかによくある、4コマ目を考えてみよう!とか、セリフを考えてみよう!みたいな投稿のお題によくあるパターンですけど、絵がそんなに描けない子でも楽しんで取り組めるし、指導する側にも特に高い画力が求められないので、こういう形式の教室には最適ですよね。実際、全然手が動かなくて途方に暮れてる子は、3回とも一人もいなかったんじゃないでしょうか。
 色鉛筆やコピックも用意してあるので、絵を描いて、セリフを考えたら、色塗りも楽しめますし、特に低学年の子で、4コマ漫画ばかりだと疲れちゃう場合も想定して、オリジナルのぬり絵も10種類くらい用意してました。



 学生スタッフの指導の仕方も、事前に自分たちでしっかりマニュアルを作って、とにかくひざ・腰をかがめて子供たちの目線に合わせる、とか、常に笑顔をキープとか、とにかく一緒に楽しむ感じでほめて盛り上げてあげようとか、基本的だけど、慣れてないとなかなかできない具体的なことをしっかり共有して臨んでいて、すごくよかったと思います。





 あえて来年度に向けての課題を言えば、オリジナルの修了証を用意してあげたりすると、より達成感を持って帰ってもらえるかな、と思いましたが、今回も、みんなとっても満足げに帰ってくれたので、ま、それは来年また考えるということで。


 メインのメンバーに漫研のめっちゃ描ける子がいるおかげで、テキストや教材のレベルがしっかりしてるってのもありますが、それでも、美術系の大学でも専門学校でもなく、指導の専門家もいるわけでもないのに、いきなりこのレベルで学生だけでまんが教室とかやれちゃうってことが証明されたのは、今後の北九州市漫画ミュージアムの開設に向けて、非常に明るい材料だと思います。
 京都の国際マンガミュージアムで多種多様なワークショップが運営できるのは、京都精華大学マンガ学部の学生をボランティアスタッフで動員できるから、ってのは事実で、それに対して北九州はそんなバックアップないもんなー、って、前はちょっと思ってたんですけど、全然できるんじゃん!てことです。
 高いレベルのことがやりたければ、あず漫画研究会さんのお手伝いも期待できるわけですし、「見る、読む、描く」の「描く」の部分の企画は、かなりいろんなことができそうです。
 いや、昨年度一年の活動で、できるはずだ、とは思ってましたよ?だけど、ほんとにミヤモト抜きでどれくらいできるの?っていうあちらこちらからの疑問に対して、はっきり、ほらね!っていう答えを出してくれた、というか、どれくらいできるのかどころか、ここまでできるんだ!ってことを証明してくれて、軽く感動し、また内心鼻高々にさせてくれたまんが教室でありました。メンバー30名足らずで、1学期の間に『Comi9!』作りながら、これだけのイベントができるって、やっぱすごいですよ。
 メンバーのみんな、特に中心になって動いてくれた3年生5人には、ほんとに感謝と称賛の拍手を送りたいです。実際、終わった後、1・2年生からお花贈呈、思わず涙、みたいなサプライズもあったりして、いやー、よかったよかった。あと、一緒に準備を進めてくれた学芸員の柴田さん、それから、僕のいない北九大で、ミーティングなどの活動のための拠点を提供してくれた地域共生教育センターの石谷さん、キャリアセンターの見舘先生にも、感謝申し上げます。ありがとうございました。



 当日参加のメンバーと文化振興課の柴田さんといっしょに、アートラウンジから出られるテラスで小倉城をバックに記念撮影。また俺このポーズですね…。