宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

本日5月16日は伊藤比呂美さんの講演と鶴本市朗さんの「バガボンドでブンガクしよう」講座

 今日は北九大生3名と、超リーズナブルなカフェランチ食って展示見てから、連続講演会の第4回、伊藤比呂美さんによる「井上雄彦と「最後のマンガ展」を語る」を拝聴であります。
 いやー、伊藤さんパワフル。1時間半ずっと立ちっぱなし、時折ホワイトボードに予備校講師のような勢いでキーワードを書きつけながら、会場のキャパいっぱいとなったぎっしりのお客さんに、通りのいい声でテンポよく語りかけ、問いかけます。
 面白い。かっこいい。よく知らなかったけど、このオバチャンすげえ。
 大半が伊藤さんのファンと思しきレディースの中に、それでも今までの講演会より多くいた若者たちの間で、そんな感覚が広がっていくのが分かるような時間でした。
 自分のマンガ体験歴から語り始めながら、井上作品との出会い、井上氏本人との出会い等へ語り進め、マンガとは細分化された人々の欲望にピンポイントで訴える表現である、という、『漫画がはじまる』でも述べられている認識に触れた上で、若くて美しい男たちが汗をいっぱいかきながら紙の上で舞い踊る「SLAM DUNK」という作品が、いかに自分の欲望に訴えたか、と展開します。


漫画がはじまる

漫画がはじまる


 以下、「バガボンド」と「SLAM DUNK」を往復して読むことで得られた、「SLAM DUNK」は現代の軍記物である、という、これも、『漫画がはじまる』で述べられている認識を詳しく述べられた後、最近伊藤さんが引っ掛かっているという、「沢庵問題」について、「最後のマンガ展」についても伊藤さんが感じている引っ掛かりとからめて、述べられました。これは、まだ考えがまとまっていないので、講演録をまとめる際、書き直す、とおっしゃっていたので、ここでは詳しく触れません。
 一通り講演が終わった後の質疑の時間では、勇気ある若者が、この「沢庵問題」について触れ、こなれないながらもいろいろ言葉を発してくれたので、伊藤さんがそれを拾って議論を広げ、そもそも読者というのは作品をありがたく「待つ」だけの存在なのか、評論の役割って何なの?という問いも含めて、ここには評論を仕事にしてる人がいますんで、と、唐突に跡上史郎さんと僕に、順番に、評論て何なの問題と沢庵問題にレスを求められました。
 跡上さんが、また上手な返しをされるので、ハードルが上がってしまい、僕自身も実はこの「沢庵問題」については、来週自分の講演の時に触れようと思っていたので、仕方なく、来週90分かけて話した上での仮の結論にしようと思っていた話を、今日してしまう羽目に。
 幸い伊藤さんは面白がってくれましたが、内心、今日これ話しちゃって来週どうすんだ俺?あ、でも今日来てる人は大半が伊藤さんのファンだから来週は来ないからいいのか?とか色々考えていたのでした。
 
 
 講演終了後、僕と北九大生、それからこの井上展で入場整理&会場監視のアルバイトをしてるスタッフさんで今日講演を聴きに来てた数名のみなさん、それから近代文学館の鶴本市朗さんで連れ立ってorangeへ。
 鶴本さんが、5月6日の近代文学館での講座「バガボンドでブンガクしよう」を、われわれのために再演して下さるというのです。
 10名ほどの聴衆のために、特別にorangeの2階に入れてもらい、鶴本さんによる「SLAM DUNK」と「バガボンド」の読解が、とっても完成度の高いパワーポイントによるプレゼンテーションで展開されました。高校の先生をされていただけあって、話が分かりやすくて面白い。



 カフェの屋根裏部屋で聞くマンガ論、というなんだかウキウキするシチュエーションとあいまって、小一時間の講座もあっという間に終わりました。


 思いがけず、大変充実した井上論講座を二本立てで堪能し終わるともう6時。北九大組は、またしても(いや、またしてもなのは僕だけなんですが)担々麺屋に行き、僕は今日は酸辣湯麺をいただいて、高速バスで帰路についたのでした。


 明日はコドモの小学校の運動会、なんですが、福岡は雨予報、雨で順延の場合、何と来週の日曜じゃなくて、僕の講演がある土曜日になるということなので、ちょっとマジ勘弁してくださいよぉと天気の神様に念じている前夜であります。
 明後日の月曜日は、今度はミヤモゼミ4年生と、再びスタンプラリーコンプ&霊厳洞も行くぜツアーであります。6日間のうちに隔日で3回熊本に行く、って、我ながらどうかしてるという気がしますが、それくらい、とにかく、いろんな人に、特に若い人たちに体験させずにはいられない、その体験の様子を見てみたい、そんなイベントなんですよ、この「最後のマンガ展 重版 熊本版」は。