宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

JR展に〈参加〉してきました



 だいぶ前になってしまいましたが、4月23日に4期生=3年生ゼミ、24日に2年生ゼミ(2年のゼミは3・4年のゼミとは独立した形で設けられています)の時間を使って、ワタリウム美術館で開かれている「JR展 世界はアートで変わっていく」


http://www.watarium.co.jp/exhibition/1302JR/index_e.html


 に参加してきました。
 JRは、匿名のストリートアーティストで、無名の人々の巨大な顔写真をストリートに貼り出すという形の表現活動を世界各地で展開しています。



 つまり、基本的には美術館の中に「作品」を展示する、という発表形態を取らないので、今回の展覧会も、今までの彼の活動を紹介するビデオ映像や写真が、展示されているのですが、中心となるのは、来館者自身が、プリクラのような簡単な撮影設備で顔写真を撮ると、それがその場でA0判の巨大な白黒写真のポスターになって、プリントアウトされる、という企画になっています。
 過酷な社会問題を抱えた地区で、そこに生きる無名の人々の顔写真を撮り、そうした地区への偏見や無関心にとらわれた「普通の」人々に、無名でも、貧しくても、差別されていても、犯罪とも無縁でない生活を送っていても、確かにそこには一人一人異なる「顔」を持った人々がいるのだと気付かせるように、様々な場所に巨大な顔写真を出現させるJRのプロジェクトは、Inside Outと名付けられていますが、日本では東日本大震災の被災地で、多くの人々の顔写真を撮り、被災地のあちこちに貼り出すという活動となっています。
 展示の最後で最も重要なコーナーには、そこで撮られた多くの被災地の日本人の顔写真ポスターが貼り出され、来館者が撮った顔写真ポスターは、吹き抜けになっているその空間のてっぺんに設けられたプリンターから文字通り降ってきます。



 撮られた写真は、ポスターになるだけでなく、Inside Outのサイトにアップされていきます。


http://www.insideoutproject.net/japan/#/0423175541


 こんな感じ。上のは23日の分。下のは24日の分です。


http://www.insideoutproject.net/japan/#/0424195401


 リンク先のサイトを順に見ていくとわかりますが、結構有名な人も来てます。芸能人も来てるし、知識人だと浅田彰とか。
 で、ここでは、社会的に有名か無名かは問題ではなく、みな同じように個性的な顔を持っているのだということが、感覚的に納得されるようになっているわけです。
 プロジェクトとしては、ポスターをもらったら、みなさんどこかでそれを貼り出して、その写真をまたハッシュタグ付けてツイッターでアップしたりしてね、っていうことになっていて、さすがに日本だといきなり街中に貼り出す人はあまりいなくて、ポスターを持った状態で館内や自宅で撮った写真などをアップしてるわけですが、せっかくゼミで行ったんだし、4期生22人もいるんだしってことで、4期生ゼミでは、みんなでポスター作った後、中野キャンパスに戻って、キャンパス内でいろいろ遊んでみました。



 このくらいの大きさがあるわけですね。



 夜で人が少ないのをいいことに、エントランスホール的なところに広げてみたり。



 エントランスから3階に上がる長いエスカレーターに乗ってみたり。



 これは6階のラウンジです。



 疲れてきたのでくつろいでいます。


 「世界はアートで変わっていく」という副題を最初見たときは、おいおい能天気すぎるのでは?と思いましたが、相当な危険と困難を伴うであろうJRの実際の活動を見ると、その印象は変わります。
 その硬派な社会的意識に満ちた活動からすると、僕らがやったのはほんとにただのお遊びですし、ツイッターに写真アップしてる人も、ちょっと特別な記念写真くらいの感覚のものが多いんですけど、JRという人の語り口や存在感の軽快さを見ると、きっかけはとにかく楽しいからやるってことでいいようにも思えます。



 実際、自分の顔写真をA0判モノクロのポスターにすることなんて普通はないわけで、不思議なことに、そうするとどんな人の写真もアートっぽく見えるんですよね。でもそれは逆で、結局、みんなふだん気にしてないけど、どんな人の顔にも「力」があるんだってことなんだと思います。それが忘れられ、「軽んじられていい顔の持ち主たち」というグルーピングがいつの間にか行われていくとき、様々な軋轢が起こる。だから、まずは自分の、そして無名の他人の、顔がそれぞれによきものとして存在していることを実感することがスタートなんだと思います。
 そんなわけで、世の中的にはほぼ無名の教員のゼミに、さらに無名のゼミ生が22人、でも確かにここにいます、ということを愉快に確認する、という行為も、JRは広い意味でInside Outプロジェクトの一環と認めてくれるのではないかなと思っています。



 というわけで、エスカレーターでは動画も撮ってみました。迷惑行為にならないように、人のほとんどいない時間帯に、事故のないように注意喚起してからやってます。