宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

小野佐世男展


 今日は、川崎市岡本太郎美術館で行われている「小野佐世男 モガ・オン・パレード」展へ行ってきました。


http://www.taromuseum.jp/exhibition/current.html


 展覧会の概要、小野佐世男の略歴等は、上のリンク先をご覧ください。
 漫画・アニメーションを中心とした大衆文化研究家であり、マンガ学会の理事もしてくださっている、僕らの大先輩、小野耕世さんのお父様でもあります。展示の準備にも深く関わられたようです。
 時間をかけて準備されたことがわかる、大変充実した展示でした。上の概要にもあるように、決してモガを描いた時期の作品だけでなく、小野佐世男の仕事が網羅的に見られる内容で、雑誌掲載作品で原画があるものは、極力、原画と実際の掲載誌のページを見比べられるように展示されていました。
 原画と掲載誌はたいてい所蔵先が違うので、ということは、学芸員さんが、それぞれの対応関係を調べて、それぞれの所蔵先に借用依頼をして…、という地道な作業をされているわけです。原画自体に何年何月の何という雑誌に載ったものかがちゃんと記されているのかどうかはわかりませんでしたが、それがない場合、この作業は気の遠くなるような面倒さを伴います。ただそこにあるものを展示すればよいわけではなく、全体の構成や、その作品自体が展示に値するものかどうかを選定していく作業の中で、そうした同定や所蔵調査、借用手続などがあるわけで、今回のように、開催館自体の所蔵品はほぼゼロという展覧会は、ほんとに大変なんですよ。


 というようなことを思いながらつい見てしまうわけですが、そうした作業はすべて、よい展示を作るために行われるわけで、展示自体がパッとしなければ仕方ないわけです。その意味でも、非常に、力のある作品が並び、また、時期ごとに小野の変わっていく部分、変わらない部分がよくわかる展示になっていたと思います。
 漫画史に興味のある人だけでなく、昭和戦前・戦中期から占領期にかけての大衆消費文化、都市風俗、そして戦時中、南方に行った漫画家が何を見、描き残そうとしたか、といった事柄に興味のある人にも、見ごたえたっぷりの展示になっています。会期は14日までですので、まだの方は是非。図録も展示内容をきちんと網羅した良いものになっています。小野耕世さんの解説も載っています。