宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

というわけで、シュルレアリスム展と小谷元彦展

 をゼミ生たちと見てきました。
 国立新美術館シュルレアリスム展は、平日でまだ開いたばかりの割には、かなりの盛況。これ、会期終盤は大変なことになるのでは。


http://www.sur2011.jp/


 この運動の理論と実践の展開を時系列に沿ってきっちり押さえようとする大変オーソドックスな内容で、ボリュームもたっぷり。ポンピドゥーセンターの所蔵品で構成されていることもあってか、日本でもおなじみのダリやマグリットは少なめでしたが、その分、僕には初めての作品が多く、勉強になりました。
 コーナーごとに掲げられたアンドレ・ブルトンの文章の断片は、いずれも、極めて現代的、というか、単に21世紀の今の社会と文化のありようについて言っているようにも見え、いや、そんな紋切型の物言いで紹介してしまってはいけないのではないかとも思いつつ、いろいろ考えさせられました。
 かなりしっかり時間をかけて見たので、美術館内のカフェで上のリサとガスパールラテなどいただいてお茶したり、初めて来た学生ばかりだったので、館内をひとめぐりしたり。



 最後は美術館前で記念撮影。「シュールな感じで」と言ってみたんですが、なにぶん6名中5名が春からの新ゼミ生だったもので、あまりノッてもらえず。「ていうか先生お願いします」と言われ、1期生男子と二人でよく分からない写真を撮ることに。
 


 そんなつもりはなかったのに微妙に「マトリックス」ぽくなってしまっています。
 で、六本木トンネルをくぐって六本木ヒルズへ移動。森美術館の「小谷元彦 幽体の知覚」展へ。


http://www.mori.art.museum/contents/phantom_limb/


 こちらも期待にたがわぬ、というか、期待を上回る質量の展示でした。いや、馬鹿っぽいボキャブラリーで恐縮ですが、マジでヤバいっすよ、この展覧会。
 広い意味での「彫刻」というか立体造形作品と映像作品からなる展示なんですが、どれも、目で見て手でさわれる実体を持つ物体や肉体の、その内部にある「何か」が幽体離脱してくる瞬間を捉えようとしたもの、あるいは、実体の表面の下に潜在している幽体を、むき出しにする行為の連続と言えばいいでしょうか。
 人間や人間を取り巻く世界の、普段意識しない、エロスやタナトスに関わる部分を知覚させようという作品ばかりなので、生理的に「来る」感覚が半端なかったです。特に、異常にゆっくり落ちたり逆流したりする滝の映像の中に入る作品は、個人的にかなりヤバかったです。
 そんなわけで、シュルレアリスムのやろうとしていたことと根底的に通じるものを感じた次第です。
 もう今週いっぱいで終わりですが、まだの方はぜひ。あ、静岡県立美術館と高松市美術館熊本市現代美術館に巡回するようなので、そちらの方も、ぜひ。CAMKでやるとき、できればもう一回見に行きたいなあ。



 いい意味で(?)精神的・生理的にぐったりして森美術館を出るとちょうど18時前くらい。
 展望台で大東京の夜景を見て、ヒルズ内のお店でリア充な空気感に気圧されながら、でもなんだかんだでしっかり美味しい夕食をいただきつつ歓談した後、解散したのでした。