6月19、20日は日本マンガ学会第10回大会
でした。
記念すべき10回目の大会のシンポジウムは「ゼロ年代のマンガ状況−次の10年に向けて」と題して、以下のような内容で行なわれました。
10:30〜12:45 第1部 「<女子>が読んだゼロ年代」
パネリスト:
福田里香 [お菓子研究家]
川原和子 [マンガエッセイスト]
野中モモ [ライター・翻訳家]
司会:藤本由香里
14:00〜16:15 第2部「マンガのゼロ年代、その「想像力」をめぐる冒険」
パネリスト:
宇野常寛 [評論家]
泉信行 [漫画研究家]
南信長 [マンガ解説者]
司会:伊藤剛
マンガにとって、ゼロ年代と呼ばれたこの10年はどのような時代だったのか。多種多様な表現そのものが作り出す〈状況〉、そしてまた表現を取り巻く社会的・文化的環境の総体としての〈状況〉。この二つを丸ごと視野に入れながら、二つのセッションを通じて、さまざまな視点から捉え直す試みです。
一人でその「全体」を見渡すのが不可能になったとも言われるマンガ状況に対して、リアルタイムで鋭敏な批評を繰り広げてきた論者のみなさんに集まっていただくことで、あえてこの10年の「総論」に挑む、10年目を迎えたマンガ学会ならではの大掛かりな試みです。
せっかくの節目の大会が、ちょうどディケイドの切れ目に当たっているのだから、マンガ学会にも「今」に向かう意欲があることをきちんと見せようと思い、このような企画を立てさせていただきました。
パネリストのみなさんのおかげで、期待以上に多面的に、この10年のマンガ表現、およびその読まれ方、さらにそれを取り巻くメディア環境・コミュニケーション環境の変容が、どのように相関しているのかを、浮かび上がらせていただくことができたと思います。
第1部、第2部ともに、司会以外、パネリストのみなさんは全員、学会員ではないということで、いろいろ戸惑われることもあったかと思います。
また第2部については、きちんと連絡役を担うべき私の不手際で、みなさんに事前に十分段取りをお伝えすることができず、ご迷惑をおかけすることにもなったのですが、にもかかわらず、お三方ともそんなことを感じさせない充実したお話を展開してくださいました。司会の伊藤剛さんも、お三方の論点をうまくつなげて有機的な議論を展開してくださいました。
前夜の2時間余りの打ち合わせで、どんどん興味深い論点が出てきて、それがつながっていく様子も楽しかったのですが、当日はみなさん、さらにそこに新しいトピックを加えてくださっていて、おおー、流石だーと興奮しました。
そんなわけで、第1部、第2部ともに、1+1+1が3ではなく、それ以上になるシンポだったと思います。
さきほど事務局から入った知らせでは、昨年のシンポより多くの聴衆の方にお越しいただき、また、内容についても好評の声を多数お寄せいただいているとのことで、これもひとえに、第1部、第2部のご登壇者のみなさんのおかげと感謝しております。
もとはと言えば、自分自身が十分にマンガの「今」に追いつけていない実感から、この方々にぜひ教えてほしい、という思いもあって立てた企画でしたので、私自身が一番楽しませていただき、また勉強させていただいたと思います。
本当にありがとうございました。