宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

「横山裕一 ネオ漫画の全記録」展

 いやー、これは、すばらしい。もうほんとに評判良くて、お客さんも口コミで増えてるみたいですし、雑誌等での紹介も、あとからあとから出ているようで、僕が付け加えることもないかと思うんですが。



 美術館・博物館という空間で漫画をどう展示するか、という点において、井上展とはまた違う可能性を見せてくれたなと思います。今連載中の作品の外伝的エピソードをすべて描きおろして構成されている井上展とは違って、この横山展で展示されているのは、基本的にすべて既発表作の原画です。が、その展示空間の構成が、作品の世界観を反映したものになっているわけです。



 楕円形の会場空間に、楕円上に原画を平置きで並べて、とにかく右から左へ左周りで歩きながら読み進めるという展示方法は、面白いだけでなく、普通に読みやすいですし、会場全体に「ニュー土木」に出てくる人工芝が敷き詰められていて、一部作中と同じように丸まったままなのもうれしい。
 なんていうか、普段使わない神経が活性化させられる大変素晴らしい展覧会だと思います。


 公式ブログでも紹介されているように、こうした見事な展示構成のデザインを手掛けた建築事務所のトラフ、やはり作品にふさわしいかっこいい広告チラシ等のデザインを担当した服部一成事務所、そしてこういったドンピシャのコーディネートを横山さんと相談しながら進めていった学芸員の金澤韻さん、作家への理解と愛の深いクリエイター、キュレーターの絶妙なコラボレーションによって、この展覧会が成り立っていることを、隠さず正しくアピールしている点も、いいと思います。従来の漫画展は、誰がどういう意図でこの空間を構成しているかというキュレーターの「顔」が見えない展示がほとんどだったからです。


 井上展、そしてこの横山展によって、漫画展はいよいよ、「漫画の」展示であることと、漫画の「展示」であることの、両方に積極的な意味を持たせた、読者=観客に、新しい漫画体験にして展覧会体験を提供しうる段階に、本格的に入りつつあるなと思います。これに刺激を受けて、さらにいろんな漫画展が仕掛けられていくといいなあと思います。


 
 この辺の、漫画を描き始める以前の時代のタブローもカッコよかったですよ。


 あと、今週は作家による公開制作期間ということで、会場の一隅で、普通に作業をしている横山さんと、えらくフランクにコミュニケーションできるのも楽しかったです。




 ゲラに、校正の指示を書き込むというより、直接どんどん手を加えて、それ自体をバージョンアップされた作品にしていく感じです。



 「手伝いたい者サイン希望者などは申し出てください」ということで、うちのゼミ生も、小さい丸いシールをめくって、すぐに貼りやすいように机の縁に並べて貼っていく作業をさせてもらいました。



 金澤さんに撮ってもらいました。横山展から3人合流して6人になってます。



 こっちはフラッシュたいたバージョン。横山さんが微妙によそ見してんのがポイント。
 そして、いろんなみなさんが、単行本やチラシだけでなく、Tシャツなどにもサインをお願いしているのを見て、俺の銀色のケータイには横山さんの絵が似合うのではと、お願いしてしまいました。上の写真で僕が手に持ってるやつですね。



 うれしい。帰りのバスで、微妙に「トラベル」っぽく撮ってみました。



 絵柄が四種類あるチケット、巨大な記録集、横山さんのインタビューが載ったミュージアムニュース。閉館ぎりぎりまで横山さんの周りに居座ってしまったので、グッズを買う時間は取れなかったんですが、Tシャツとかバンダナとかある模様。ぬーん、もう一回来たいぜ。