宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

「マンガの居場所」、終わります。

 先月、12月25日掲載分の、ヤマダトモコさん担当回の「マンガの居場所」をご覧になった方、文末に、いつもは記されていない「=おわり」の4文字が置かれていたことに気付かれましたでしょうか。
 そうなのです。1998年の4月以来、足かけ10年にわたって毎日新聞に連載されたこのリレーコラム、レギュラーの連載は、この12月の分で最終回だったのです。
 毎日新聞全体の大幅な紙面刷新に伴う見直しの結果、おそらく新聞連載のマンガ論コラムとしては最長寿の連載も、終わることになりました。1月の下旬に、特別編として夏目さんによる総括的なコラムが載り、その際、ヤマダさん、瓜生吉則さん、そして僕、のメンバーによる200字程度のコメントも併せて掲載されます。これをもって、幕が下りることになります。


 残念ですけどね。
 でも「潮時」だったのかな、という気もします。東京本社版夕刊に隔週連載で始まり、2000年から毎週連載になり、2002年からは全国掲載になる代わりに毎月連載になったわけですが、少なくとも僕にとっては、書いてて「熱」と面白さを一番感じていたのは毎週連載の頃でした。4人で持ち回りと言っても、4週に1回まわってくるわけですから、かなりハイペースな連載で、毎週決まった曜日に載ってる分、ある程度固定的な読者も想定でき、あ、夏目さんそのネタで来たか、じゃあちょっと今週はこんな感じで、みたいなライブ感、セッション感がありました。
 もちろん、毎月掲載になってからも、お互いが何書いてるかはちゃんと意識してましたが、なにせ自分の番が回って来るのは4カ月に1回な上に、掲載日が確定していなかったので、先月の回も見ていてちゃんと憶えてくれてる読者というのをほとんど想定しない書き方しかできなくなりましたし、毎週載ってることがもたらすライブ感は、どうしても失われていたと思います。
 それでも、毎月掲載になってからも6年続いたわけですから、実は毎月掲載の時期が一番長い。新聞掲載のコラムというのは、どういう読者にどう読まれているのかがすごく見えにくいのですが、一般に新旧交代のサイクルの速い新聞連載コラムということを考えれば、やはり、決して不評ではなかったのだろうと思います。
 新刊レビューでもなければ、新聞文化面の定型通りの「時評」でもない、とにかくマンガとその周辺の事象について、いま取り上げたいなという話題に4人4様の切り口でアプローチする、というスタイルは、やはり、最初の2年間担当されていた鈴賀れにさんも含めた、この5人の組み合わせからしか生まれえなかったと思います。その意味で、ささやかではあるけれど、「マンガの語り方」の新しいあり方を示すことができた連載ではなかったかなと思っています。


 個人的には、生まれて初めての「連載」でもあり、それがいきなり3大紙の一つのコラムであったということで、単行本のあとがきにも書きましたが、原稿料もらいながら文章修業をさせてもらうような、幸福な体験をさせてくれた、特別な仕事でした。それが終わる、ということに自分のキャリアの節目を感じています。新しいことをやれ、とマンガの神様が言っているのかな、という気がします。

マンガの居場所

マンガの居場所