宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

今日の寝る前の本

 今日はお父さんが選んでいいよ、というので、ずっと前から怖がって読んでなかったこちらを提案してみたら、案外読んでみる気になったのでした。

うまかたやまんば (日本傑作絵本シリーズ)

うまかたやまんば (日本傑作絵本シリーズ)

 うまかたが、せっかくの積荷の魚や、大事な馬をやまんばにばりばり食べられてしまうあたりは、ちょっと怖いみたいでしたが、やまんばが水面に映ったうまかたを水の中に隠れてると勘違いして池に飛び込んだり、沸かした甘酒や焼いた餅をまんまとうまかたに飲まれ食べられてしまう辺りから、「やまんば、いがいとおばかさんやね!」とうれしくなってきて、最後、煮え湯でやまんばが殺されてしまうのも、ま、うまかたも食べようとしてたくらいだから仕方ないか、みたいな感じで、なんだ、おもしろいおはなしじゃん、みたいになってました。
 おざわとしおの再話は、口頭伝承としての昔話のあり方に忠実な、マックス・リュティ言うところの「中身を抜いた」ざっくりとした語り口で、必要以上に写実的にも内面的にもなりませんし、その限りでもとの話の残酷性もそのまま残しています。赤羽末吉の絵も、それに応じた、さばさばしていて少しユーモラスな絶妙のタッチになっています。
 ちなみに再話者のおざわとしおは、大塚英志の著作でおなじみのリュティの著作の翻訳者であり、日本と世界の昔話の比較研究の権威である小澤俊夫先生であります。僕が筑波大学比較文化学類に入学した時の学類長で、筑波時代はしょっちゅう研究室へ遊びに行かせていただいた恩師の一人なのであります。制度上の指導教官ではなかったのですが、僕は図々しいので、いろんな先生のところに遊びに行っていて、小澤先生のところにも、当時はまっていたフリッパーズ・ギター小沢健二の父親でもいらっしゃる(ちなみに小澤征爾のお兄様でもいらっしゃいます。なんかすげー一族です)、ということで、昨日の深夜番組に出てたフリッパーズの話をしに行ったり、なんていう気安いお付き合いをさせていただいていました。
 この本は、先生が筑波を定年でご退官になる際に、研究室の引越しをお手伝いさせてもらったところ、お礼にということでいただいたものなのでした。なので、先生のサイン入りです。コドモにももちろん、この本、おとうさんのせんせいがおはなしかいたんよ、それでおとうさんもらったん、と自慢しときました。この本をもらったときには、自分の子供に読み聞かせる日が来るなんて、夢にも思わなかったなと、ちょっと感慨にふけったりするのでした。
 小沢先生は世界の昔話のアンソロジーの編集や、日本の昔話の再話も数多く手がけられていますが、研究者としての主著をいくつかとリュティの翻訳をご紹介しておきます。語りの研究者らしく、どれも非常に読みやすい文章で書かれていますが、内容的にはとっても深いです。

昔話のコスモロジー―ひとと動物との婚姻譚 (講談社学術文庫)

昔話のコスモロジー―ひとと動物との婚姻譚 (講談社学術文庫)

昔話の語法 (福音館の単行本)

昔話の語法 (福音館の単行本)

昔話入門

昔話入門

昔ばなしとは何か (福武文庫―JOYシリーズ)

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グリム童話の誕生―聞くメルヒェンから読むメルヒェンへ (朝日選書)

グリム童話の誕生―聞くメルヒェンから読むメルヒェンへ (朝日選書)

昔話その美学と人間像

昔話その美学と人間像

 あ、それから現在はご自分で設立された小澤昔ばなし研究所を拠点に活動をしておられます。オザケンの「うさぎ!」が連載されているのも、ここから出ている『季刊子どもと昔話』であります。

 アマゾンでは最新号の取り扱いはないのかな?