宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

北九州市に漫画ミュージアム構想

 というニュースが、水曜日の朝日新聞西部本社版夕刊に、わりと大きな記事で出ました。北九州市立大学宮本大人准教授のコメントも出ています。
 アサヒコムの「マイタウン」のとこに出るかなと思ってたんですが、載らないようなのでこちらでお知らせしときます。朝日的にはその程度のニュースバリューってことなんでしょか。
 えー、北九州市が漫画ミュージアムを設立する計画を立てており、今年度予算にその設計費等として2200万円を計上した、というニュースです。
 小倉駅近くの砂津というところに、西鉄が運営するショッピングモール「チャチャタウン」というのがありまして、これを2009年度春に今の倍くらいの面積に増床してリニューアルオープンする予定になっているのですが、その増床部分の中に、このミュージアムを作る、ということなんですね。なので、一応このミュージアムも2009年春オープンを目指していると。だけど2009年春ってあと2年切ってますからね。正直かなり不安ですが。
 と、他人事のように言っていますが、ミヤモト准教授もすでに着々とインサイダーにされつつある模様です。担当の方に数回お話したことがすでに「識者の意見」として計画に取り入れられたりしています。
 西鉄としても市としても、とにかくお客さんがたくさん来てゆっくりしていく施設、を希望しているようですし(ま、ぶっちゃけモールを運営する側からすれば、子供にマンガ読ませといてその間親がゆっくり買い物できるような施設であってくれればいいんじゃないかと。いや、わかんないですけど)、収集・保存・研究に重点を置いた施設にはできない様子なので、とにかくマンガの奥深さを知ってもらうための広い間口として機能できればいいのかなと。
 地元の人たちに親しまれて、いつも何か面白い市民参加型の企画をやっているところ、というのが目指すべき方向性なのかなと思うんですが、そういうのって、よっぽどのアイデアマンであり、かつマンガ業界・マンガ研究業界とのパイプがあるような人がいないと、ただ単にヌルい、ねらいのはっきりしない施設になりかねないので、どういう形で個性化すればいいのか、限られた時間の中で考えていかなければいけません・・・っていつの間にオレが!?みたいなことになってます。
 松本零士を筆頭に、関谷ひさし畑中純中島史雄陸奥A子、わたせせいぞう、そして最近では「バンビ〜ノ」のせきやてつじ、と、ゆかりの作家はかなりバラッバラの(笑)多彩さを誇る北九州市ですので、そうした作家さんたちの協力を得られれば小規模でも小まめに色んな企画を打つことができるかもしれませんし、地理的にアジアの(特に、若い)作家さんたちとの交流などを促進する方向もあるかもしれません。でもこれって予算というより、結局、足回りのいい有能なコーディネータを抱えられるかどうかの問題ですしね。
 僕としては、まずは訪れた皆さんに、マンガを読むということ、自分が自分の人生の中でマンガを読んできたということの意味を、問い直すような機会が提供できる場になればいいかなと思っています。具体的には、団塊世代の人たちが、ここにくれば自分の思い出の「あのマンガ」に確実に出会える施設であり、若いマンガ好きの人たちのたまり場であり出会いの場になる施設であり、あの時代のマンガの面白さにこの世代が、この時代のマンガの面白さにあの世代が出会える発見の場になる施設にするということですね。原画や原本なんか持たなくてもいいから、文庫でいいから、各時代の代表作や傑作を網羅し、同時代の作品についてはメジャーなものもおさえつつ、こんなんありますよ的な、学芸員のソムリエとしてのセンスを打ち出した選書・紹介・展示をしていくということです。
 あと、市民参加企画として、市民からの資料の寄贈はもちろん、企画展の企画自体の公募(東京の杉並区の歴史博物館とかがやってますよね)、北九州市が実施している「自分史文学賞」とからめての「私とマンガ」エッセイの募集などが考えられますし、もちろん、小学生から高校生までさまざまなレベルの子達を対象にしたマンガ教室、それからもちろん、マンガ論系の講座もやれるでしょう。「あず」の拠点としての性格を生かして、九州のマンガ同人誌活動との連係を考えることもできるかもしれません。市側は「人材育成」にもこだわっていますので、ならばこれからの可能性に賭けてデジタルマンガに特化した賞などを設けるという手もあるかもしれません。
 こういうこと言うと市議会で怒られたりするのかもしれませんが、いい意味で「悪場所」的な、なんか変なものに出会える空間にならないかなと。どうせマンガなんてもともと「いかがわしい」もんなんですから、そのいかがわしさゆえのどきどき感がなけりゃ、リピーターはついてくれないだろうと思うんですね。「999」や「ヤマト」の松本零士だけじゃなく「男おいどん」「大四畳半」シリーズの松本零士にもしっかり出会える、畑中純中島史雄の「代表作」をちゃんと「保存」できる場所になってほしいなと。それがあって初めて関谷ひさしの「ストップ!にいちゃん」も陸奥A子の乙女ちっくも際立つはずなんで。ってまだこの辺の皆さんが協力してくれるかどうかはわからないので、その辺は誤解なきよう。あ、でも施設名はいっそ「大北九州大漫画博物館」とかにすればいいんじゃ?
 ともあれ、いずれもまだ僕のぼんやりした希望というか妄想に過ぎないので、こういう施設になると思われては困るのですが、関係各方面にはこれから何かとお知恵を拝借することになるかもしれませんので、よろしくお願いします。てか、オレ、これ、大学の仕事と並行してちゃんとやれんのかな。