宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

ところで昨日は

九大・六本松キャンパスで研究会でした。
いつもの玉川博章さん、稗島武さん、山田暢子さん、金慈恵さん、中村テーマさんのほか、今回は九大・芸術工学部4年生の吉冨友紀子さんに参加してもらって発表してもらいました。
吉冨さんは今、「少女マンガの主人公の顔の表現について」というタイトルの卒業論文に取り掛かっていて、その中間報告をしてもらい、みんなでいろいろ話しました。簡単にまとめると、現在の少女マンガの中で「かわいい」ということになっている登場人物の顔がどう描かれているかをいくつかのポイントに分けて調べ、どこがどうなってるとその子が「かわいい」ことの記号になるか、をリストアップする、という感じですね。例えば、『なかよし』、『りぼん』、『ちゃお』などの場合、「かわいい」主人公はみんな、目の縦の長さが、顔の縦の長さの何分の一以上になってる、とかです。
目の長さ比のほか、眉毛、まつげ、唇、髪型等々のポイントに分けて、読者層と出版社ごとに、主要な少女誌7、8誌掲載の全作品の主人公についてそれを調べる作業を進めていて、目の長さと顔の長さの比率とかもちゃんと正面向いた顔のコマを探して測って計算されてます。
これって、誰もが「誰かやってくんないかな」と思いつつ、面倒だから自分ではやらないというタイプの作業なわけで、それこそ、コンピュータグラフィックスとか「顔学」とか認知科学とかの分野ではこれと似たような研究はあるんでしょうが、マンガを素材にジャンルのコードの問題としてやったものは、僕の知るかぎり、ないので、このレベルでちゃんとやって、対象年齢ごと、あるいは出版社ごとのコードの違いが出てくれば、マンガ学会の学会誌とかに出せるよね、という話になりました。
吉冨さんはもう就職が決まっていて、さしあたり研究者への道を歩む予定はないのですが、別にそういう人の、生涯に一本の論文でも、いいものなら学会誌に載せて蓄積していくことは、マンガ研究全体の発展につながるわけです。いまや多分、全国でかなりの数の卒業論文がマンガをテーマに書かれているわけで、その中にはそうした蓄積の中に含まれるべきレベルのものもあると思うんですよね。そういうものをそのまま埋もれさせないように、大学で自分の学生がマンガをテーマにしたものを書いて、これは出来がいいなと思った先生は、どんどんマンガ学会に投稿させてほしいなー、などと思った昨日の夜なのでした。