宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

子連れでメディア芸術祭受賞作品展に行って「正しい数の数え方」に参加してきた

 実は一度も行ったことがなかった文化庁メディア芸術祭受賞作品展。今日、次男・三男・オクサンと一緒に行ってみました。
 短編アニメとかメディア芸術系の作品とかゲームとか、それなりに子供も楽しめるものがあるんじゃないかと。
 メインの目的はエンターテインメント部門の大賞「正しい数の数え方」。岸野雄一によるハイブリッド音楽劇、みたいな感じ。去年パリで講演した時のダイジェスト映像的なものがこちら。



 贈賞理由等はこちら。


http://festival.j-mediaarts.jp/award/entertainment/best-way-for-counting-numbers


 バックに登場するアニメーションの作り手には、西島大介やひらのりょうなど、おとうの好きなアーティストの名前もあり、ツイッターでの評判などを見ても子供も楽しめるというかさしあたり子供向けみたいなので、次男・三男も楽しいんじゃないかなと思ったわけですが(長男は塾の日なのでハナから同行してません)。
 上の動画からは具体的にどういうものかいまいちつかみきれないうえに、今とにかく「ちっちゃい子向け」を強く拒否する傾向にある三男が嫌がる可能性極めて大なので、むしろ三男にはちょっと難しいかなあとかわざと言ってみたりしながら行った次第。
 開演の1時間前に整理券を配布というシステムになっているんですが、人気のため整理券配布開始の30分前にはもう人が並び始めています。1人1枚しかもらえないので家族4人で入ろうと思うと家族4人並ばなければなりません。様子を見ながら10分前くらいに並んだんですが、もうすでにその時点で三男はご機嫌斜め。ふくれっつらで力強く「みたくない。おれこれみたくない」。
 で、まあ、なんだかんだで整理券をもらい、体ぐにゃぐにゃさせながら文句ばかり言ってる三男を連れて美術館外の乃木坂駅構内の自販機まで行ってジュース買ったところ、げんきんにもほどがあるって勢いで機嫌がよくなったので、美術館前のお外でジュース飲んで気分転換して、再び場内へ。
 席はどこがいいかと聞くと前半分の座布団席がいいというので探すともう最前列中央しか空いていません。これ絶対色々話しかけられたりする席じゃんと思いながら、座ります。
 そして開幕。
 始まってみれば、変なおじさんは出てくるわ、腕丸出しで人形劇やるわ、映像はあるわで、仕掛けはいろいろあるので、なんだかんだで目が離せなくなってる様子。
 で、案の定、客席に参加を求めるくだりでは真っ先に三男に声がかけられ、5歳児が分かるはずない絵画の奥行の話とかを振られ(笑)るものの、そこはいつもの「分かんない」って顔は見せられないというプライドで真剣な顔でうなずいています。で、ミレーの「落穂拾い」のポーズを求められると、真顔でちゃんとポーズを取ります。次に次男(小3)にも同じポーズを求め、次男も恥ずかしそうにしながらちゃんと答えたんですが、その隣の子さらに隣の子は恥ずかしがって拒否。結局うちの子二人と岸野雄一扮する川上音二郎の3人だけが落穂拾いポーズ。


 この辺ですっかり、この変なおじさんとコミュニケーションをするモードに巻き込まれた三男は、以後、ぼんやりしてて、すぐそこにいる人間大の犬になかなか気付かないオジサンに「そこそこ!そこにいるって!」「マイクのとこにいる!」と、何度も呼びかけたり、観客みんなにダンスを呼び掛けた時もちゃんとステップしたり、観客参加型音楽劇の成立に最大級の貢献をしたのでした。
 「8時だよ!!全員集合!」を見に行ったら本気で「志村ー!うしろー!」と叫ぶタイプだということがはっきりしました。


 終了後、出口で岸野=音二郎さんともタッチをかわしてちゃんとバイバイ言ってたので、なんだかんだ楽しんだかなと思ってたんですが、その場を離れたら即「おれこれみたくなかった」とまた憤懣やるかたないという顔で言ってて、美術館の外で残ってたジュースを飲む間も「おれきょうここきたくなかった」と言ってて、一貫してんなと思いました。
 これは意地張って楽しかったのを認めなかったんじゃなくて、多分、主観的にはほんとに楽しくなかったんだと思います。変な鈍いおじさんが目の前で訳の分かんない歌うたったり、もたもたしてたりしたから、しょうがないので答えてやったり教えてやったり一緒に踊ってやっただけなんでしょう。でもそんな変な経験をいつか何かの時にふと思い出したりする、みたいなことは人生の中にあるといいんじゃないかな。


 子供向けのエンターテインメントとしてみた時、子供をうまく巻き込みながら、あー楽しかったー!面白かったー!と満足させて帰らせる技術で言えば、ヒーローショーとか「おかあさんといっしょ」のファミリーコンサートとかの方が全然上だと思いますし、岸野雄一という名前、他の参加クリエイターたちの名前にひかれて見に来た大人の観客からすればゆるいとこもいっぱいあると思います。
 でもむしろ、面白いんだか面白くないんだかもよくわからない、普段見たことのない何か変なものに、1時間、最初から最後まで付き合わせる、ということに、良くできたエンターテインメントでは得られない何かがあり得るんじゃないかなと思いました。


 ちなみに次男は観客参加場面では思ったより照れくさそうにしてたので、あ、もう小3になるとそういうもんかと思ってたんですが、帰って来てからは普通にうれしそうに「一番前の真ん中は一番目立つね!」とか言ってたので、こいつはこいつでほんとかわいいなと思いました。


 で、この劇がなかったとしたら、メディア芸術祭の受賞作品展は5歳児連れではほとんど楽しめないということも、今日得た教訓でした(笑)。