宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

「映画 鈴木先生」トークイベント<鈴木先生 補習1>


角川シネマ新宿掲示されてる、舞台挨拶の際のスタッフ、キャストのみなさんのサイン入りポスター)


 「記録は可能か。」展からの流れのゼミ生1名&卒業生1名に、ゼミ生1名がさらに合流、4人で行ってきました。
 「補習1」とあるように、角川シネマ新宿で毎週土曜日にこの「補習」イベントを続けていくとのこと。ここまで舞台挨拶とかトークとか頻繁にやる映画ってあんまりないですよね。作り手のこの作品にかける熱意が伝わります。
 この日の登壇者は、河合勇人監督、守屋圭一郎プロデューサー、そして校長先生役の斉木しげるさん。さらにスペシャルゲストとして「踊る大捜査線」の本広克行監督。通常のチケット料金でこのメンツトークが聞けるって、ファンにとってはすごいお得感ですよね。
 今回はちゃんとメモ取りながら聞いたので、以下、割と詳細なレポートを。しゃべり言葉そのままの再現ではありませんのでご容赦ください。


 30分のトークの前半は河合さん守屋さん斉木さんの3人で進行、後半から本広さん登場という構成。進行役は基本的に守屋プロデューサーでしたが、斉木さん本広さんも自分からどんどんしゃべって盛り上げてくれました。


 まずは斉木さんの自己紹介からそのままこの作品の重要な要素であるライティングの話などへ。
 斉木 この作品から「長」の付く役が増えた。先生役は曲者ぞろいの役者さんたちで、その中でできてよかった。撮影中は職員室が面白かった。今日は2時間くらい話させてもらえば(笑)。
 この作品は撮影がなかなか進まない。監督が止まったまんまになる上、何待ちなのかもわからない。仕方ないので、先生役同士で講義をしたりしてた。富田靖子さんの栄養と健康についての講義とか、長いと90分くらいやってた。

 河合監督 待たせてる意識はなかった。そんなに待たせましたっけ?
 斉木 ドラマの撮影って、「ドライ」っていうカメラなしのリハーサルがあって、カメラワークを確認する「カメリハ」があって、本番同様に全体通してのリハーサル「ランスルー」って進むんですけど、いちいち止まる。こっちとしてはランスルーまでやったら早く本番行きたいんですけど、ランスルーまで終わってもまだ20分くらい待たされたりする。
 河合監督 ライティングの時間とかですかね。
 斉木 ライティングは凝ってる。
 河合監督 教室も職員室もセットなので、セットに見えないように窓から入る光とかを調整するのは気を配ってた。
 

 守屋 斉木さんは視聴率が低くてみんな落ち込んでるときも、とにかく「これはいいホンだよ」と励ましてくれた。
 斉木 娘とその周りで評判がよかったんだよね。


 後半は本広さん登場。いきなり「本広です。日本で一番ヒットした映画を撮りました(笑)」とカマしてくれます。
 守屋プロデューサーから、守屋さんはかつて制作会社の共同テレビで本広さんの部下として、深夜のアイドルドラマなどを作ってた、河合監督は本広さんの「サトラレ」で助監督をされてたなどの縁があることを説明されました。
 本広 実は自分、AD時代に端役でAD使うってのがあって深夜ドラマで斉木さんと共演してるんですよ。
 斉木 それ今日知ったんですよ。
 本広 「鈴木先生」はテレビドラマ放映時からツイッターで応援してたけど、全然視聴率取れないんだよね。でもそれってガンダムとかエヴァとかと同じパターンだから。
 守屋 それ、もう言われすぎて麻痺してきたんですけど(笑)。
 本広 「踊る」も最初は低かったんだから。
 

 続いて河合監督の監督としてのスタイルについて
 斉木 とにかくこんなに入り込むタイプの監督は久々だった。バブルの頃から、とにかく早く撮るのがえらい的な風潮が続いてたので、印象的だった。
 河合 割とスケジュール通りやってた…つもりなんですけど(笑)。
 守屋 河合さんは、相米慎二監督とか崔洋一監督とかのもとで働いてただけあってね。本広さんあたりから、テレビの作り手・作り方と映画のそれが融合してきた印象。「鈴木先生」にも両方の畑の人がいた。
 本広 いやほんとドラマの時は「映画っぽいな」って思ってた。
 河合 むしろこの「映画 鈴木先生」の方が、映画っぽくとは意識せずにやってた。


 風間俊介さんの演技について
 本広 映画版では風間君がすごかった。「踊る」のスペシャルの時に稲垣吾郎ちゃんにやってもらった役と似たところもあって、吾郎ちゃんはもう「悪い!」っていうのに振り切ってそれはそれですごかったんだけど、この風間くんのは「悪い」に振り切らなくて、どっちとも取れる、揺れてるとこに本質が見える、みたいな感じで。
 斉木 あんなうまい人がいるとは知らなかった。


 生徒役について
 本広 土屋太鳳ちゃんもすごいよね。
 斉木 まだ10代なんでしょ?
 本広 生徒役はがっちりリハーサルするんでしょ?
 守屋 映画版では、職員室シーンを撮ってる間に、となりの教室で、ドラマ版で各話の演出をやった橋本光二郎さんとかがリハーサルしてました。生徒役の子はまだ若いってのもあって、ドラマ版の時もかなりリアルに追い詰められてました。自分のシーンの後、セットの脇で号泣してたり。
 斉木 生徒のシーンに全く違和感がないんだよね。
 河合 そこはすごく意識した。物語の内容的に実際にはありえないようなリアリティのない展開があるので、その分、生徒の演技がリアルじゃないと。
 本広 あの古沢さんの脚本の言葉遣いが丸出しになった独特の言い回しのセリフを、ドラマ版の最初のうちは生徒役の子たちが自分のものにできてなくて、違和感があったんだけど、終盤はそれがすごくよくなった。この作品ってセリフはほとんど脚本のままでしょ?自分ならもっと一人一人に個性つけちゃったり、アドリブを許したりするんだけど。「踊る」の北村総一郎さんとかアドリブでバンバン変えちゃってるから。
 河合 語尾を少し変える程度ですね。でもセリフのない生徒の演技も重要で、古沢さんの脚本に書いてない部分をそれで埋めてる感じ。
 守屋 この映画でいうと、屋上に生徒たちが駆け上がってくるシーンとか、全員リハーサルからほんとに1階から駆け上がらせてる。
 河合 それでカバが過呼吸になっちゃって撮影できなくなったりしましたね。


 長谷川博己さんについて
 本広 長谷川さんはよくこの仕事受けたよね。この映画は特に、脚本見た時点で「俺が立ってないじゃないか!」って言ってもおかしくない。よくありますよ、そういうこと。
 河合 ○田さんとかだったら大変ですよね(笑)。今回、撮影中に、つい長谷川さんに「全然長谷川さん撮ってないな」って言っちゃって(笑)、本人もそこで「やっぱり?」的な。
 守屋 でももうドラマ版からの連続性があるから、長谷川さんがいないシーンにも、鈴木先生が「いる」感じがあるんですよね。
 斉木 鈴木先生って、首と肩が連動して動くんだよね。首だけ横向けるってことがなくて、肩も一緒に動く。たぶん長谷川さんが意識して役作りでやってる。あとあの眼鏡の奥の何かたくらんでる感じの目がいい。


 こんな感じで30分のトークはあっという間に終了。斉木さんはまた、僕は2時間くらいやってもいいんだけどと言ってました。
 で、一言ずつ。
 守屋 ドラマから映画まで2年間、中学生っていう存在に本当の学校の先生みたいに接することになったので、ラストシーンは何度見ても感動してしまう。
 本広 映画版も最初の3連休の大雪とかあって、苦戦してるなと思って見てる。ツイッターとかソーシャルメディアの力でロングランにつなげてほしい。
 斉木 一人が二人に紹介していってもらえばあっという間に全人口に広がるので(笑)。自分は自分が出てる作品にもクールな方でどんどん文句言ったりもするが、この作品はほんとにグッとくる。
 河合 息苦しい世の中が少しでも生きやすくなるといいなと思って作った。この映画が多くの人に見られるような世の中であってほしい。なるべく長く上映が続けられるよう、応援お願いします。


 で、この「補習」、次回2月2日は原作の武富健治さんと守屋プロデューサー、そしてキャストのどなたかとさらにゲストが予定されていることを予告してこの日は終了でありました。30分は短い!という印象でしたが、通常料金でこうしたメンツのトークが聞けるのは十分すぎるくらいお得だと思います。「毎週」がいつまでなのかは告げられなかったので、少しでも多くの補習が受けられるよう、ファンのみなさんのリピート、そして周囲のみなさんへの拡散を、ぜひお願いします!