宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

今日の寝る前の本

 で、今日は4月号。

 「みつけたよ さわったよ にわのむし」。むしの「む」の字の点のとこが、よく見るとダンゴムシの形になってます。
 主人公は女の子。むしのことを教えてくれるのはお母さん。いまふうですね。
 おお、ジェンダーフリーだ、そりゃ女の子だって虫好きの子はいるさ、なんて読み始めたわけですが、みつけてさわるのは、ダンゴムシにはじまって、ワラジムシ、ヤスデ、ジグモ、さらには虫じゃないけどカナヘビ、となかなかのセレクト。みつけるだけでさわらなかったのはゲジゲジ、ハサミムシ、ミミズ、アゲハチョウの幼虫。本気です。マジです。アゲハチョウが出てくるのは一番最後ですから。女の子にも虫に親しんでもらうためにまずはチョウチョから、みたいなあまっちょろい配慮はこれっぽっちもありません。
 ネコが蹴飛ばした植木鉢の下にダンゴムシやワラジムシを見つけた主人公に、おかあさんはさっそくさわってごらんと言います。まるくなって面白い。この辺まではまだ分かるわけですが、このおかあさんの虫愛づる母君振りはかなりのものです。さっと走って逃げたゲジゲジを見て、「あれは、サムよ!」とわけのわからないことを言い出します。「サム?」と思わず口にする主人公にすっかり同化した私は、次の発言に驚愕するのでした。
 「ほんとうは ゲジっていうの。でも、おかあさんは こどものころ あのむしを サムって よんでいたのよ。だいすきだった おはなしに でてくる、あしの はやい おとこのこの なまえなの」
 えええええ。大好きだったおはなしに出てくる足の速い男の子の名前をゲジゲジに。
 このおかあさん、ただの「男の子みたいな遊びが好きだった女の子」かと思いきや、相当な不思議ちゃんです。ていうかそのおはなしって何?絶対実在するでしょ。ゲジゲジみたいに足の速い(笑)サムって男の子が出てくるおはなし。マジ知りてえ。
 というわけで、ある種のみなさんには激萌えなキャラのおかあさん、ジグモがえさを捕まえるために地上に出している袋を「こもりうたを うたうみたいに」やさしくそうっとしずかに引っ張り出すことを促し、またまたびっくりな言動にいたりますが、あんまりネタバレしてもアレなんで、この辺にしておきます。ほっそい描線を何度も重ねた妙に暗い感じの絵柄もある種の人にはたまらんのではないかと思われます。絵本としてというより、普通にこんなのが好きな人、結構おられると思いますので、おすすめです。
 ちなみに私、昆虫学者になりたかった過去を持っておりますが、昆虫じゃない虫、つまり足が8本以上あるやつは基本的に苦手です。
 なので、この本、昨日の昼に初めて読んだんですが、夜さっそく、今まで虫が苦手だった長男が両手にヤスデダンゴムシやジグモやゲジゲジをわらわら乗っけて喜ぶさまを夢に見てしまいました。ぐえっ、そこまで好きにならんでも。でも、ここでとうちゃんが嫌そうにしてはいかん、この子の好奇心を阻害してしまう、と必死にこらえつつ「わー、すごいなあ」とか言ってんの。
 ま、そんくらいのインパクトのある本ですので、ご興味のある方はどうぞ。いや、いい本だと思います、ほんとに。子供も喜んで見てました。