宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

今日の寝る前の本

 は、

ちいさいおうち

ちいさいおうち

 を、初めて私めが読ませていただきました。
 古典中の古典なのは存じ上げておりますが、これについてどういうことが論じられてきたのかはきちんと存じ上げません。ので、あくまで今日久しぶりに読んでの一読者の感想に過ぎませんが、この本って、こんなにストレートに「都会はいや!田舎がいい!」って意味のことを文章で言っちゃってたんですね。もうちょっと淡々と客観的に書いてた気がしてたんですが。
 とはいえ、絵本はあくまで絵本ですから、文章だけ読んだってしょうがないので、この絵本の持ってる力とか厚みとかのありようについては、もうちょっといろんな角度から見るべきなんだろうなと思いました。だって、都会嫌いの田舎礼賛なんて、それ自体が近代化と都市化の産物なわけで、そういう「メッセージ」に無邪気に共感できるのは、田舎の人じゃなくって都会の人だったりするでしょう?といった批判で事足りてしまう。しかし、さすがにこの絵本はもうちょっと色々あるだろうと思うんですね。たとえば、ちいさいおうちのまわりがどんどん都市化していく様子の描き方は、やっぱりある種の「面白さ」を持ってしまっているのであって、単に不愉快なことがどんどん進行しているという風にしか読めないものではない。ある種の人にとっては、やはり馬車が自動車に変わり鉄道が引かれ人々がせわしなく歩き回るようになっていく過程は、なにがしかの興奮を誘うものだし、それはそれとしてしっかり表現してしまっていると思うんですね。そうした絵と言葉の表現の重層性が、この絵本の力の元になってるだろうと。
 などと、多分とっくに誰かが言ってそうなことですが、ま、寝ぼけたアタマでつい書き始めてしまったので、ちょっとしたメモとして、残しておきます。