宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

とはいえ

昨日金曜からまた怒涛の日々が始まりまして、年末の東大での集中講義まで、なんとか乗り切らねばなりません。
で、昨日の夜は、アヴァンティ・ゼミ「『リボンの騎士』を読む」がありました。前にも書きましたように、年末の金曜の夜、忘年会にも行かずに、ミヤモトの話を聞きに来る、働く大人の女性中心のお客さんとは一体どのような方々なのか、皆目見当がつかなかったのですが、意外と(って失礼ですが)普通の、マンガが好きで、マンガを「研究」するってどういう感じ?という興味を持ってくださった、知的に柔軟な感じのする12名のみなさんに集まっていただきました。男性も3名いらしていて、男女比的にも割といい感じでした。
質問も、内容をきちんと踏まえて、さらに話が広がるいい質問ばかりしていただきました。講座終了後、時間のある方たちと軽く食事させてもらったんですが、そのときも、波長を合わせるのに苦労するということがなくて、楽しい時間を過ごさせてもらいました。九州の貸本屋さんの話とか、北九州出身の陸奥A子さんの話とか、「九州とマンガ」な話も聞けて、よかったです。
その中に、今九州大学の文学部で吾妻ひでお論を卒論で書いてる学生さんがいて、昨夜のうちに早速ブログで報告してくれてます。
http://d.hatena.ne.jp/komogawa/20051216
基本的にありがたい内容なのですが、『なかよし』版の『リボンの騎士』についてちょっと不正確な点があるので、訂正させていただきます。

「少女クラブ」で連載されていたヴァージョンの「リボンの騎士」の主人公サファイヤはどのように描かれていたかについて。体型はどう見ても女性なのに、周りの人物はそれを見てサファイヤが女性であると気づかずに、たまたま間違えて履いていたハイヒールを見かけ、ただそれだけを理由としてようやくサファイヤが女性ではないかとの疑いを持たれるという描かれ方に関する考察は、伊藤剛氏が「地底国の怪人」に見た「マンガのおばけ・うさぎのおばけ」と通じるなと思った。「少女クラブ」の十年後に「なかよし」で連載された「リボンの騎士」のサファイヤは、「少女クラブ」とは異なりその女性的な体型のために女性ではないかとの疑いをかけられる。「地底国の怪人」のリメイクにおいても手塚治虫は主人公のウサギ(耳男(人生の耳男ってこれから来てるのかな))に肉体的、生物学的な要素を与えている。

と書いてくれていて、全体としてはいい指摘だと思うのですが、『なかよし』版でも、「たまたま間違えて履いていたハイヒールを見かけ、ただそれだけを理由としてようやくサファイヤが女性ではないかとの疑いを持たれる」のは同じで、「その女性的な体型のため」ではないんですね。ただ、『なかよし』版で、サファイヤの「肉体において女性である」という肉体性が、『少女クラブ』版とは違って、作品内の登場人物たちにも意識可能なものとして前面に出てくるのは確かです。石切り場で働かされる場面で、「もう動けないわ…あたし…やっぱり女なのねー…」とサファイヤが言ったり、女剣士フリーベに自分が女であることを明かす時、胸元を開いて見せたり、といった具合にです。
昨日の話は『少女クラブ』版を読み込むというのが本編で、『なかよし』版との比較は、質疑の時間に、ざっと話したので、上のように理解されても仕方ない話し方になっていたかもしれません。お詫びして訂正・補足させていただきます。