宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

渋谷のマンガ喫茶にて

原作との照らし合わせ終了。
ていうほど原作と違わないんですけどね。ていうか、めちゃめちゃ忠実。そして、原作に忠実であることに、原作のイメージを壊さないことに、ほぼ全力を使い果たしてしまった感じでした。もちろん、それでいいんです。だって、ほとんどのお客さんは原作を読んでて、重要な場面ごとに、このキャラがあのせりふを口にする瞬間を待ちながら見てるんですから。「レンが松田龍平ってどうなん?」「いや途中からはまってきたんじゃん」とか「シンはいくらなんでも違くなーい?」とか「あのシーンは原作になかったよねー」とか「あそこはあんなセリフだっけ?」「えーちょっと帰ったらもっかい読むー」とか言いながら楽しむもんで、もうほんとにそういうふうに作ってある映画でしたね。原作を知らない人に映画単体で評価してもらおうという勝負はもともとしてないし、それは、こういう「旬のもの」のやり方としては正解だと思います。
で、まあ、そういうものだという前評判はあちこちから聞いてたんで、そういうつもりで見たんですが、出だし30分くらいは、予想以上にテンポが悪いし(原作の軽妙な会話のシーンをセリフだけ忠実に追ったりするのと、カット割りもなんつーかもうトロくて、構図のとり方も全然工夫がなくて平板)、ちゃんと芝居ができてんのは宮崎あおいだけだし(松田龍平さえどうしていいのかわかんないって感じの演じ方になってる)、まあほんとに原作のダイジェスト版みたいになってるし、といった感じだったんですが、幸子が出てくるあたりから少しずつよくなってきました。
「幸子が案の定アニメ声だった件」については、すでに松谷創一郎さんのブログで知ってたんですが、そんな幸子、演技プランは微妙にリアルでナチュラルになってて、あの「わざとだよ?」のとことか目線はずすんですよ。あ、目線はずした、ていうか章司も幸子も油絵科ってなんでそんなマイナーチェンジを(原作では章司はCGデザイン専攻、幸子は学部が同じってとこまでしか明らかにされてない)、と思ってたんですが、その章司と別れる辺りから映画独自の微妙なアレンジが効果的に機能するようになってきて、あと、驚いたことに、最初予想以上のセリフ棒読みだった中島美嘉がだんだんうまくなってくるんですね。松田龍平もよくなってくるし、まわりの、ビジュアル的に雰囲気が似てることを優先に選ばれたような人たちも、それなりにハマってくる。映画としても、出だしは意味不明に長いショットとかがあったんですが、とりあえずそういうのは気にならないレベルになってきます。なんだろ、ほぼ順撮りなのかなと思って、後でパンフの撮影日誌を見たら、必ずしもそうでもないけど、やっぱり重要なシーンはだいたい順番になってたみたい。もちろん、僕が見てる間に慣らされちゃってったって可能性も無きにしもあらずですが。
ライブの場面は、松谷さんも言うように、ま、地味っちゃ地味なんですけど、映像的なギミックなしで、凡庸ではあるけどまじめに撮ってるのは、僕は好感を持ちました。とにかくHYDEの書いたブラストの曲に力がありますからね、変なことしないのは正解だと思います。ただ、707号室で、初めてナナが歌う場面はBGMかぶせないほうがよかった気がします。
ま、そんなこんなで、結構楽しめましたよ。水曜日には講義のネタにするし、CDも買っちゃおっかな。