宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

6月9日の日記

毎週木曜は原則オフにして、その分土曜に働いています。日曜もわりと働いてるかな。
なんですが、来週は土日のマンガ学会に合わせて木曜から関西に出張するので、いろいろ繰り上げてこなさないといけない上、今月は、「マンガの居場所」(毎日新聞夕刊)と、「楽読楽書・マンガ」(共同通信配信で全国の地方紙約25誌に掲載の新刊三点紹介コラム)の締め切りが続くので、何がなんでも今日は休まねば。
ということで、家族で熊本まで出かけて熊本市現代美術館|CAMKで開催中の草間彌生展(熊本市現代美術館)を見に行きました。
2歳9ヶ月の男子を連れて草間彌生展とは、相当頭のおかしい夫婦のような気もしますが、現代美術って、おおむね子供には楽しいもんですよ。「さわっちゃだめ」っていう最大の難点はありますが。いや、でも草間彌生はちょっと違うだろ、って思われるかもしれませんが、別に子供は彼女のヘヴィなライフヒストリーを重ね合わせながら見たりしないですし、将来そういうことが分かったら分かったで、それはそれでいい経験なんじゃないですか。
で、もちろん、こっちのペースにつき合わせるのは無理なんで、オクサンがちゃんと計画してくれまして、電車大好きボッチャマのために、西鉄特急→JR特急有明→熊本の市電(路面電車)という乗り継ぎで大興奮していただき、熊本でうまい昼飯をたらふく食していただいて、ベビーカーで心地よい眠りについていただいた上で、夫婦で展示をゆっくり見まして、目が覚めた時点でもう一回ボッチャマにも一通り見ていただく、という手順を踏みました。
展示は、素晴らしかったですよ。九州にお住まいの方は、ぜひ。ボッチャマも、案の定さわりたがって、制止するのが大変でしたが(特に「ナルシスの庭」と「水上の蛍」がよかったようです。そりゃ楽しいよな)、帰ってきてからも図録を見て、いろいろ言いながら展示を反芻し、表紙の青い髪の草間さんをなでなでしたり、うちにあるおもちゃを草間さんに見せてあげたりしていたので、かなり草間さんのことが好きになられた様子でした。
また、ミュージアムショップで買った水玉クッションにも、「まるまるさん」という名前をつけて一緒に就寝したりして、楽しんでおられました。ちなみにまるまるさんは、途中で「ブーヘー」という名前に出世したようです。お外にいるときはぁ、まるまるさんだったけどぉ、うちに来たからぁ、ブーヘー。だそうです。あともう一つちなみに、ボッチャマの中では熊本市現代美術館は「にょきにょきプラザ」という名前になったようです。たしかににょきにょきがいっぱい展示してましたが、「プラザ」て。そんな言葉、どこでおぼえたんだか。でもわりといいネーミングだと思いますので、草間展開催中は「CAMK、別名にょきにょきプラザ」ということにしていただけるといいのではないかと思います。
さて、親バカご披露タイムはこの辺までにいたしまして、実はこちら熊本市現代美術館の学芸員の一人である金澤韻(こだま)さんとは、お友達でして、彼女と久々にお会いするというのも、今回の楽しみでした。
金澤さんは、以前、東京芸大の大学院で、美術教育とマンガの関わりについて研究されていて、修士論文をまとめた論文、「『漫画の描き方』本と美術教育の関係についての一考察−石森章太郎『マンガ家入門』を中心に−」(『美術教育研究』6号、2000年)は、高校の「美術」科に、ほんの少しですが、マンガを描くという課程が取り入れられたことについて考える上でも、大変有益なものだと思います。
この論文と、『コミックGON』の2号(1998年)に載った「漫画の描き方本の基礎知識」(取材・文:泊倫人)の二つで、“問題としての漫画の描き方本”についてはかなり適切な見取り図が得られると思うのですが、かたや芸大の紀要、かたや廃刊になった雑誌ということで、両方一度に見ようと思うと、国会図書館に行くしかないんじゃないか(あ、あと僕の研究室とか)というのが、困ったものです。
金澤さんは、いまではすっかりマンガ研究からは遠のいているようにおっしゃってましたが、美術館のホームギャラリーには、マンガもマンガ論の本もありまして、そのなかなか的確な選書は、彼女によるものです。
せっかく近くに住むことになったので、これからは頻繁に行き来しようねーというような話をし、とりあえず、草間展にゼミ生を連れてくることを約束して、また市電→JR→西鉄と乗り継いで帰路に着いたのでした。