宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

川崎市市民ミュージアムの浸水被害について有志で文書を出しました

【11月26日追記】この件、11月25日夜にミュージアムから回答がありました。下記のエントリで報告していますので、ご覧ください。

hrhtm1970.hatenablog.com

 

【以下、11月18日発表分】

本日、川崎市長と川崎市市民ミュージアム館長にあてて、以下の文書を発送しました。

 

2019年11月18日

 

川崎市長 福田紀彦 殿

川崎市市民ミュージアム館長 大野正勝 殿

 

 

学習院大学教授 夏目房之介

学習院大学非常勤講師 佐々木果(元川崎市市民ミュージアム臨時職員)

東京工芸大学教授 細萱敦(元川崎市市民ミュージアム学芸員、現同ミュージアム評議員

東京工芸大学教授 伊藤剛

東京工芸大学客員教授 小野耕世

明治大学国際日本学部准教授 宮本大人(元川崎市市民ミュージアム資料等収集委員会委員)

明治大学米沢嘉博記念図書館スタッフ ヤマダトモコ(元川崎市市民ミュージアム嘱託職員)

漫画文化研究家 秋田孝宏(元川崎市市民ミュージアム臨時職員)

日本マンガ学会会長 竹宮惠子

日本マンガ学会理事 呉智英(元川崎市市民ミュージアム資料等収集委員会委員)

京都精華大学教授 吉村和真

北九州市漫画ミュージアム専門研究員 表智之

 

 

 この度の台風19号による川崎市の被災、および川崎市市民ミュージアムの浸水被害につきまして、心よりお見舞い申し上げます。

 

 私たちは、文化庁のメディア芸術関連事業、巡回展事業等において、貴ミュージアムと様々な関わりを持っている漫画関連の施設・研究機関に所属する有志の会です。貴ミュージアムの収蔵品の資料的価値、および展示等の教育普及活動の意義を、高く評価し、研究活動上の恩恵を被ってきた立場から、以下の2点のお願いとお伝えしたいことがあり、書面を差し上げることにした次第です。

 

1.漫画関連資料の被害状況、およびその救出・修復の方針・方策・実施状況について、積極的・定期的な情報発信をお願いしたいこと。

 

2.私たちは、被害を受けた資料の救出・修復に関する支援のご依頼をいただければ、速やかに、私たちの持つ知見・人的ネットワーク、所属機関の有するノウハウ等を活かして、できる限りの支援をさせていただく準備をしていること。

 

 まず1.につきまして、すでに被災から1カ月以上経過し、市からの公表、各種報道等、市議団による視察等によって、収蔵庫・収蔵品の被害状況が様々に伝えられておりますが、その情報は断片的で、特に貴ミュージアムの大きな特徴となっている漫画関連資料につきましては、全くと言っていいほど状況が伝えられておりません。

 資料の救出・修復活動についても、文化庁(を通じて独立行政法人国立文化財機構)、および神奈川県博物館協会への支援依頼がなされたこと、映画フィルムと絵画の一部が収蔵庫から搬出されていること、ミュージアム敷地内に資料の冷凍用コンテナを設置する予定であること、2100万円の補正予算が計上されたことなどが伝えられ、ミュージアムへの寄付金の募集も始まっておりますが、やはり漫画関連資料につきましてはどのような機関にどのような支援依頼がなされているのか伝えられておりません。

 11月15日の市長会見では、被害の全容を知るにはまず収蔵庫から搬出する必要があるが、搬出先としての冷凍倉庫等が確保できない状況だったためとのことでしたが、収蔵庫は分野ごとに収蔵室が分かれており、その内部の状況はいくつか写真が出ていることからも、概要を知ることは可能と考えます。であれば、どの収蔵室のどの分野の資料がどういう状況かといった点について、随時公表していただきたいのです。

 貴ミュージアムの資料の価値を知る私たちとしては、今の状況を強く憂慮し、一刻も早く、被害の概要と、川崎市がその救出・修復にどう取り組んでいかれる方針なのかを知りたいと考えております。

 漫画関連資料に限らず、貴ミュージアムの有する収蔵品は、単に研究者にとっての価値があるというにとどまらず、川崎市、ひいては人類社会全体の共有財産として長く守られるべき文化財であり、その被害状況を積極的に情報公開していくことは、その危機的状況を広く理解してもらい、支援を得ていく上で必要不可欠だと考えます。

 東日本大震災で大規模な被害にあった美術館・博物館の多くがそうであったように、積極的に被害情報を公開し、広く支援のための知見・ノウハウを集め、具体的な救出・修復活動上の協力を得ていくことは、社会的理解・協力を得る一般的な方法になっていると思われます。ぜひ、市長の定期会見や、貴ミュージアムのホームページ等を通じて、収蔵品の状況についての情報発信をお願いしたいと考えます。

 

 次に2.につきまして、私たちは、文化庁に対してなされた支援依頼が、私たちの元にも届く可能性を想定して、相互に連絡を取り合い、支援依頼があった場合、すぐに動けるように準備をしております。現状、そのような依頼は、私たちの元に届いておりませんが、ぜひ、今まで貴ミュージアムと私たちが様々な連携活動を通じて培ってきた信頼関係に基づいて、支援の依頼をいただければと思います。

 特に、川崎市と覚書を交わして収蔵資料のデータベース、デジタルアーカイブの作成に取り組んでいた学習院大学文化庁のメディア芸術所蔵情報整備事業や連動した展覧会企画の実施などで連携してきた明治大学米沢嘉博記念図書館、および、東京工芸大学芸術学部マンガ学科は、かつて貴ミュージアム学芸員の職にあったり、資料等収集委員会委員であったりといった、貴ミュージアムの収蔵品の特質に通じた者も多く、所在地も首都圏であることから、支援の要請に即座に動ける体制を整えております。ぜひ一度お声がけをいただき、今後の資料救出・修復活動についての意見交換等の機会を与えていただければと思います。

 

 今回のこの書面につきましては、これを差し上げたことを各種メディアでも公表し、漫画部門の収蔵品について心配されている方々に向けて、私たちが具体的な支援に動こうとしていることをお伝えしたいと考えております。

 非常事態の中恐縮ですが、以上の2点につきまして、できるだけ速やかに、川崎市、および川崎市市民ミュージアムとしてのお考えを回答いただけますよう、お願いいたします。

 

 

本件連絡先(以下略)

 

 

 ミュージアムの状況については、報道などがあるたび、私のツイッターでスレッドをつなげる形でツイートしていますので、ご存じでない方は、よろしければご覧ください。

 

https://twitter.com/hrhtm2011/status/1190132954871156736?s=20

 

上記文書への回答など、動きがありましたら、こちらでも報告していくようにします。