宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

(仮称)北九州市漫画ミュージアムの入居予定先が公表されました

hrhtm19702010-02-16

 というわけで改めて。
 社会面にどーんとデカく載ってるのに西日本新聞のサイトには載ってないみたいなんで、書き写します。

小倉駅北口に「漫画の聖地」

 日本の漫画文化の発信拠点として、北九州市が設立を表明していた「漫画ミュージアム(仮称)」が、JR小倉駅北口の「旧ラフォーレ原宿・小倉ビル」(同市小倉北区)の6、7階に入居することが14日、市などへの取材で分かった。同ビルは2007年1月のラフォーレ撤退後、ほぼ空きビルになっていた。下の1〜5階にはコスプレファッションやフィギュア(人形)などのテナントを集積させ、12年4月にも「漫画ファンの聖地」に生まれ変わるという。
 
 同市は「銀河鉄道999」の松本零士氏や「まんだら屋の良太」の畑中純氏、「バンビーノ!」のせきやてつじ氏ら、著名な漫画家を多く輩出している。このため、漫画の魅力を伝える拠点としてミュージアムを計画。西日本鉄道(福岡市)が同区に建設を打ち出した商業施設「第2チャチャタウン(仮称)」に入居する予定だったが、西鉄が計画を延期したため、代替施設を探していた。

 漫画ミュージアム自治体が単独で運営する総合漫画博物館としては全国初の施設となる。延べ床面積は約2500平方メートル。散逸の恐れのある著名作家の貴重な原画などを収集し、資料として保存・展示。郷土ゆかりの漫画家の紹介コーナーや、名作漫画を読めるコーナーを設け、漫画教室も開講するという。

 (後略)

 西日本新聞朝刊2010年2月15日(月)


 市の担当者さんから送ってもらったプレスリリースも書き写しておきます。

「(仮称)北九州市漫画ミュージアムの新整備箇所の決定」について

 (仮称)北九州市漫画ミュージアムについては、当初予定地の「チャチャタウン小倉2期計画」が延期となったことを受けて、整備箇所について再検討を行いました。
 整備箇所の再検討にあたっては、
  ○中心市街地活性化基本計画(小倉地区)の区域内の場所
  ○交通の利便性が良く、既存施設の活用ができる場所
  ○松本零士氏など地元ゆかりの漫画家の協力を得やすい場所
  などの条件を満たした候補地について具体的な検討を進め、その結果下記の通り整備箇所を決定しました。

 新整備箇所:小倉興産21号館(旧「ラフォーレ原宿小倉」入居ビル)
   所在地:小倉北区浅野二丁目14−5

 (決定した主な理由)
 小倉興産21号館側から出された:「漫画ミュージアムを核として、ビル全体を漫画による統一コンセプトビルとして再生し、北九州市と日本の新たなシンボル的施設にする。」という提案内容について、
  ◇漫画文化を全国へ発信する北九州市オンリーワンの施設となる
  ◇市外や海外から本市への誘客の目玉となる
  ◇漫画を統一コンセプトとしたビルが誕生することで小倉駅北口全体の周遊性を高め、地域の活性化などに寄与する
 ことなどを高く評価したものです。


 別紙資料も載せときます。
 別紙資料1 小倉興産21号館(所有者:アパマンショップホールディングス)の提案の概要



 別紙資料2は文字だけなんで書き写します。

別紙資料2 「(仮称)北九州市漫画ミュージアム」の今後の予定
 ・平成22年度(4〜5月頃) 基本・実施設計着手、
 ・平成23年度 施設整備
 ・平成24年度当初 オープン


 西日本の記事にあるように、当初の予定地だったショッピングモールの建設計画が延期ということになってしまったため、入居先の再選定となっていたわけですが、元の計画より派手な形になりました。
 再選定の過程には僕は一切関わっていないので、普通にびっくりしたんですが、場所も駅からすぐ(北口から濡れずに行ける)ですし、ビル全体をマンガ・アニメ関連のテナントで埋めるということで、非常にインパクトの強いものになってよかったなと思っています。
 僕としては、海外からの誘客とかいうデカイ話よりまずは地元のみなさんにリピーターになってもらって、しっかり支えてもらえる施設になってほしいわけですが、こういう施設であれば、遠方からのお客さんにも魅力的でしょうし、地元のマンガ好きの若い人にもリピーターになってもらいやすいだろうなと思います。


 ただ、ま、正直、記者さんが付けてくれた「漫画の聖地」ってフレーズは、ちょっとなあっていう気はします。


 例の国立メディア芸術総合センターとは違って、ハコには金かけずに中身重視ということを強調しているので、メディア芸術センターによく関せられていた「殿堂」という言葉は避けてくれたんだろうとは思います。鷲宮神社とかの「聖地巡礼」も念頭に置いてくれてるのかもしれません。悪意はないんだと思います。
 とはいえ、「殿堂」でも「聖地」でも、崇め奉るニュアンスのある言葉である点では大同小異なわけで、「漫画」という言葉のイメージとのミスマッチを良くも悪くも感じさせる言い方ですよね。
 細かいことにこだわるようですが、僕としてはやはり、「漫画」も今や「立派な」「文化」だから公の施設で顕彰しましょうみたいな趣旨で作られる施設じゃないはずだという思いでずっと関わってきましたし、無駄に反感を買いかねないという懸念もあるので、「聖地」はやめてほしいなあと思ってしまいます。
 自治体が税金使って作る意義は、漫画というものの、すそ野の広さ、敷居の低さ、そしてそうでありながら頂点はちゃんと高いこと、極めて多様なバックグラウンドを持つ人々が交流しうる、活気のある「広場」や「港」のような場になりうるからだと、僕は思っています。
 この辺は、基本コンセプト検討委員会をやっていた時に書いたエントリ「「漫画の港」としてのミュージアム」をお読みいただければと思います。


http://d.hatena.ne.jp/hrhtm1970/20071028


 今回の記事では、このビルに入るテナントの扱うジャンルとして「フィギュア」とか「コスプレ」といった言葉が躍っているので、コアなオタク層に絞り込んだ印象が出ていますが、ミュージアムそのものは、あくまで「銀河鉄道999」が好きな人にも「バンビーノ!」が好きな人にも、わたせせいぞうが好きな人にも畑中純が好きな人にも北条司が好きな人にも陸奥A子が好きな人にも(全部北九州ゆかりの作家さんです)開かれた場になるはずですので、あんまりミニアキバみたいなイメージを固めすぎないでほしいなと思っています。もちろん、ビル全体にはある程度の猥雑な魅力はあっていいと思うんですけどね。
 いずれにしても、僕はあくまで求められれば意見を述べさせていただくという立場でしかないので、僕の思い通りに全てが進んで行ったりするわけではないんですが、極端にそこから離れていかない限り、できるだけ応援して行きたいなと思っています。


 ちなみにこのブログでの関連エントリは、このエントリのタイトルの横にある「北九州市漫画ミュージアム(仮称)関連」というタブをクリックしてもらえれば、それだけまとめて読めますので、よろしかったらどうぞ。


【追記】各紙報道出ています。
 16日付朝刊で他紙の報道も出ています。


 まずは読売新聞。

漫画ミュージアム小倉駅北口ビルに
12年オープン
 北九州市は15日、漫画情報の発信拠点となる「市漫画ミュージアム」(仮称)をJR小倉駅北口の「旧ラフォーレ原宿小倉ビル」6、7階に設けると発表した。2012年のオープンを目指す。25日開会予定の定例議会に設計費など3900万円を盛り込んだ来年度一般会計予算案を提案する。

 漫画ミュージアムは、「銀河鉄道999」で知られる松本零士さんら市にゆかりのある漫画家の原画を資料として収蔵し、展示。漫画の歴史や漫画家の紹介コーナーのほか、漫画が自由に読めるスペースも設ける予定。6、7階は延べ床面積2500平方メートル。ビル側は、ほかのフロアに漫画関連のグッズ販売店や専門学校などを誘致したい方針という。

 漫画ミュージアムは当初、小倉北区の商業施設「第2チャチャタウン」(仮称)に開設を予定していたが、不況に伴い同施設の開業が延期されたため、市は新たに入居先を探していた。

(2010年2月16日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/fukuoka/news/20100215-OYT8T01461.htm


 次は毎日新聞です。

漫画ミュージアム:北九州で開館へ 売上高30億円見込む
 北九州市は15日、松本零士さんら市にゆかりのある漫画家の作品を収集・展示する市漫画ミュージアム(仮称)をJR小倉駅北口(小倉北区)の旧ラフォーレ原宿小倉ビル(小倉興産21号館)6、7階に開設することを明らかにした。西日本鉄道小倉北区で建設を計画している複合商業施設「第2チャチャタウン(仮称)」に入居する予定だったが、計画が延期されたため、代替地を探していた。12年度当初の開館を目指す。

 同ビルは地下1階、地上7階。07年1月にラフォーレが撤退し、現在は地下1階と1、6階の一部を除き空いている。所有する「アパマンショップホールディングス」(東京都)側が「漫画による統一コンセプトビルとして再生したい」と提案し、市が合意した。

 漫画ミュージアムが入居する6、7階は延べ床面積約2500平方メートル。提案によると、地下1〜5階に漫画やアニメ、フィギュアなどのテナントや専門学校などを誘致し、年間で集客100万人、売上高30億円を見込む。

 市は2月定例議会に提案する来年度予算案に設計費など約3920万円を計上する。階下のテナントの入居状況によっては、協定締結や開館時期の延期もあるとしている。

 第2チャチャタウンに入居しないことについて、西鉄は「コメントする立場にない」(広報室)としている。【佐藤敬一】
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20100216k0000m040152000c.html


 なぜ西鉄に聞きに行くのかよく分かりませんが、それはまあいいとして。
 「年間で集客100万人、売上高30億円を見込む」という記述があります。これは補足した方がいいかと思います。
 去年国立メディア芸術総合センターの話が出た時、その年間入場者数60万人という数字の見込みの甘さが批判されました。
 一番まとまったものとしては、漫棚通信さんの以下のエントリがあります。
 

http://mandanatsusin.cocolog-nifty.com/blog/2009/05/post-7939.html


 結論から言うと、記事からも一応わかるように、これはあくまで、このビル全体での数字です。小倉駅近辺の類似の商業施設と比べてもかなり少なめに見積もっていて、むしろほんとに採算がとれるぎりぎり最低限の数字を出している堅実な計画のようです。この点どうか誤解なきよう。 


 あと朝日と日経にも出てますが、サイトには出てないみたいですね。内容は大同小異なんで、書き写しません。
 しかし、当然っちゃ当然なんでしょうけど、こうしたニュースはあくまでローカルニュースなんですよね。ヤフーニュースとかでも毎日の記事だけ上がってますが、「漫画、コミック」のカテゴリには入れてもらえてないから、興味のある人には届いてないと思うんですよね。なんか、悔しいです。
 が、それだけに期するものはあります。準備、めちゃめちゃ丁寧にやってますからね。人は少ないし、お金もないけど、ちゃんと市の文化振興課の中に担当チームがあって、しっかり勉強して取り組んでくれてます。かけてる力の質では、類似のどの施設にも負けないと思います。2年後を、お楽しみに、という感じです。