宮本大人のミヤモメモ(続)

漫画史研究者の日常雑記。はてなダイアリーのサービス停止に伴いこちらに移転。はてなダイアリーでのエントリもそのまま残っています。

私のようなものに事典の仕事が来続けることがマンガ研究にとって幸福なこととは限るまい。

今日(あー、書いてるうちに昨日になってしまった)は授業がない日だったので、おもに研究室にこもってゲラに手を入れてました。
4時間ほどがんばって、やっとこさ完成、速達で返送。おつかれさまでした、俺。
新聞の仕事を長くやらせてもらってることもあって、字数とか行数ががっちり決まってる中で、ここを削ってここを増やして、いや、でもここでこれを言えばここは簡単でいいか、とかなんとか、ちょこちょこちょこちょこ手を入れて、最大限経済的に書く作業って、実は割と得意な気がします。いざやり出すと、はまります。
ちなみに、この原稿、某出版社から出る、明治時代をテーマにした事典(まだタイトルとか言っちゃいけないかもしれないんで)の項目執筆です。「『ポンチ』から『漫画』へ」、「ビゴー」、「似顔絵」、の3項目、それぞれ2ページずつ。図版の選択から始まって、本文、キャプションの執筆まで、図版が多いだけに、結構大変な作業です。ご依頼をいただいてから今日までにすでに8ヶ月経ってます。本が出るまで、さらに4ヶ月かかります。使用図版が他の方がお書きになる項目と重ならないように、とか、全体としての調整の作業があるので、忘れた頃にゲラが来たりします。
前に、夏目さんの責任編集で出た『週刊朝日百科世界の文学110 マンガと文学』(http://www3.asahi.com/opendoors/hyakka/sekaibun/backnumber/s110.html)に書いた「『漫画』の起源 不純な領域としての成立」と内容的に重複する部分もありますが、なるべく新しい論点や切り口を入れるように努力しました。図版は1点も重複してません。当たり前だろって思われるかもしれませんが、事典とかだと、どの事典見ても出てくる図版とか、あるでしょ?別にマンガ関係に限らず。定番は定番で、あっていいと思いますが、僕の場合、「古典」的な作品を決めるような作業をしてるわけじゃないんで、例はたくさんあるんだってことを示したいのです。
事典系の仕事って、書く分量自体は短くても、先ほど言いましたような全体の調整の作業とかがあるので、すごく時間がかかって、こちらのモチベーションが持続しにくいんですよね。労多くして責任は重く、報酬はそんなでもないし(笑)、何より読者からの反響みたいなものが、全くといっていいほど、ない。当たり前っちゃ当たり前なんですが。でも、「常識」の形成に直接関わりうる仕事なんで、それなりの使命感(!)をもって仕事をしているミヤモトとしては、断るわけにも参りません。名誉なことですし。でも、ほんとは、早く、僕以外の誰に依頼が行っても一定の水準をクリアしたものが書かれる状況になった方がいいんですけど。あ、ごめんなさい、軽く毒吐いてしまいました。
ちなみに私、以下の二つの事典でも「マンガ」の項目を書いてます。大学や公立の図書館の参考資料室にはあると思いますんで、機会があったらのぞいてやってください。

情報学事典

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新・こどもの本と読書の事典

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